(※写真はイメージです/PIXTA)

クリニックの開業に際しては、有料であれ無料であれ、開業コンサルタントへの依頼が必須です。開業まで伴走するコンサルタントですが、開業までのスケジュールや開業後の運営などは、コンサルタントによって大きく左右されます。言い換えるなら、コンサル選びがクリニック開業の成功・失敗に大きく関わるスキームとなるのです。ここでは、どのようなコンサルタントがビジネスパートナーとして適切であるかどうかを見極め、選択する方法を解説していきます。本連載は、コスモス薬品Webサイトからの転載記事です。

クリニック開院に伴走するコンサルタントだが、実態は玉石混交

クリニック開業をサポートするコンサルタントには、さまざまなタイプがいますが、特別な資格がないことから、その質は玉石混交であるといえます。

 

無料のコンサルタントは、開業に関連して調剤薬局・医療薬品卸メーカー・ハウスメーカー・医療機器メーカーなどが自社製品を融通させる見返りとしての存在であり、有料のコンサルタントは逆に、あらゆる関連する業者や開業の手続きを紹介・斡旋する存在だといえます。

 

また、無料で受けられるコンサルタントサービスは、有料のものと比べて医療制度などへの知識不足や偏りが目立つ傾向があります。そのため、全体的なコンサルティングを依頼する場合は、有料コンサルタントのほうが開業までの工程やアフターフォローが上手くいくことが多い印象です。

 

以下、有料のコンサルタントの「コンサルの質」を推し量る方法を述べていきます。

頼れるコンサルタントは体感で20%以下…選択を妥協しないこと

コンサル会社や担当者を選ぶ場合には、最低でも3社を比較検討しましょう。

 

事前相談はほとんどが無料で行っているため、その際にサービス内容や期間(特に、開業後までどこまでフォローをしてくれるか)を見極めるようにします。

 

重要なのは、上述した通り、開業に伴走するコンサルタントの知識量や人間性によって、開業立地から開業後の運営まで大きく左右される、ということです。私も医療機関の経営・管理や医師としての立場でさまざまな業者やコンサルタントを知り合いましたが、頼れるコンサルタントは体感で20%以下の印象です。そのため、妥協せずにコンサルタントを選ぶことが大切です。

 

以下は、コンサルタントの人間性や知識を推し量るポイントです。

 

①メールや電話に対して、すぐにレスポンスがある

勤務医の場合、借金をして事業を実行する、といった経験を持たない人がほとんどです。そのため、開業準備を進める際に問題や疑問に直面すると、不安になることも多くあります。

 

その際に、すぐに疑問に答えたり、問題に対処したりしてくれるコンサルタントがいれば、大きな安心材料となります。

 

筆者の基準としては、営業日であればその日のうちにレスポンスをすることが最低限のラインです。このビジネススキルの基本がないコンサルタントも多く、必ずチェックすべきポイントだといえます。

 

②持ち帰りの案件が少ない

クリニックの開業準備を進めていくと、さまざまな不明点が発生し、その場では判断ができないこともあります。1回の打ち合わせで、数件については持ち帰って後日回答…という事態は、ある意味当然です。しかし、質問の50%以上を持ち帰るなら要注意です。これは開業や医療関連の知識が乏しいことの証左であり、実際に依頼してしまうと不安要素になるといえます。そのため、コンサルタント選びの重要な目安になります。

 

③これまで従事したクリニック開業の件数が多い

これまでの実績も重要な判断材料となります。その際、単に件数を尋ねるのではなく、クリニックの開業の形態や診療科目、自分が考えている診療科開業の経験を訪ねましょう。これらがある程度豊富であれば、安心して任せてよいでしょう。

 

④アフターフォローがしっかりしている

コンサルタントの多くは、開業までがサービス対象となることが多く、その後の経営相談などは行っていません。アフターフォローを行う場合は、高額な対応となる場合もあります。アフターフォローの目安ですが、保険診療のクリニックであれば1回の訪問指導で10~20万円、自費診療のクリニックであれば30~50万円程度が目安です。

 

また、これまで開院したクリニックのアフターフォローの現況や、経営状況の推移(来院患者数の増加のペースや施策のメインなど)の実例があるかどうかも判断基準となります。

 

⑤保険診療算定や診療報酬改定などに精通している

2024年6月に実施された診療報酬改定では、感染対策や医療DX、ベースアップ加算、生活習慣病管理料など大きな変化がありました。それに付随してさまざまな届け出や診療報酬の算定可否などの迅速かつ網羅的な情報や対応が、クリニックの収益という生命線となります。

 

算定できる項目の有無や、短期間・長期間で算定できる内容と必要なアクション(地域包括診療加算、機能強化加算など)、また、小児科では包括診療(小児科診療料)か、出来高算定かによって、集患方法や経営方針は大きく異なります。こうしたノウハウを蓄積しているかも重要なポイントとなります。

 

⑥建築業者や医療機器の情報・相場を理解している

近年では建築の職人の処遇改善や材料の高騰化から、クリニックの肝となる内装工事も平均坪単価として70~80万円を要するレベルになりました。内装のデザインも数社でコンペティションを行い決定しますが、そのノウハウや企業の特徴など、開業のビジョンやイメージに合うかどうかの知識・ノウハウを有しているかも重要です。医療機器でも相場や値下げ交渉などを実行できるスキーム・スキル(これまでの実践例)を確認していく必要があります。

 

⑦スタッフの面談対応が可能

近年の医療スタッフは女性が多くを占めます。出産・子育て・介護を含めた家庭環境の影響も受ける事も多く、スタッフ雇用は難しくなってきています。給与(賞与)・福利厚生・昇給などの労務関連の知識に加えて、よりよりスタッフの募集のスキーム(紹介会社やサイトなど)があるか、客観的な面談対応や採否のアドバイスが可能であるかなど、過去の事例を踏まえた経験数の把握も重要です。

 

結果として、コンサル担当者の提案のレベルやアフターフォローを含めた医療経営・法律・診療報酬などの知識量をチェックしておくことが多方面で重要となります。

信頼できるコンサルタントをパートナーに

クリニック開業に有料のコンサルタントに依頼する場合でも、「丸投げ」は厳禁です。クリニック開業コンサルは、開業に必要な手続きや設備の選定、スタッフ採用、内覧会、開業当日以降のフォローなど多岐にわたる提案ができる方を選んでください。

 

いずれの提案も、最終的には自分自身での情報収集を含めて判断しながらも、ビジネスパートナーとなる信頼できるコンサルタントと共に歩み・考えていくことが重要です。

 

 

武井 智昭
株式会社TTコンサルティング 医師