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クリニックを開業することには、院長になることへの希望と同時に、経済的なリスクへの不安も伴うものです。一方、資金調達のリスクを抑え、開業のハードルを下げる手立てとして「ミニマム開業」という手法があります。多くの開業医が注目するミニマム開業とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。本連載は、コスモス薬品Webサイトからの転載記事です。

ミニマム開業とは?

ミニマム開業とは、クリニックを始める際の初期費用をできるだけ少なくし、開業に伴うリスクを抑える手法です。

 

通常、クリニックを始める際には、物件や設備、医療機器、宣伝、スタッフ雇用などに多額の費用がかかります。

 

例えば、テナントで内科クリニックを開業する場合、場所や条件によって異なりますが、初期費用は5,000~8,000万円が一般的です。

 

このような高額の初期投資はこれまで勤務医だった医師にとっては負担が大きく、開業後も経済的なリスクが懸念されます。

 

しかし、ミニマム、つまり最小限の資金でクリニックを開業することで、リスクも最小限にとどめ、開業のハードルを下げることができるのです。

 

ここで、ミニマム開業が注目される理由が生まれます。

 

◆ミニマム開業が選ばれる理由

ミニマム開業のメリットは、なんといっても必要最低限の資金でクリニックをスタートさせられる点です。

 

これは、自己資金がわずかでも銀行などから受ける融資が少なく済むことを意味します。

 

資金面やリスクへの感度が高い医療従事者にとっては、魅力的な選択肢と言えるでしょう。

 

以下に、ミニマム開業が選ばれる理由をいくつか取り上げてみます。

 

①経営リスクの低減

クリニック開業には高い経営リスクが伴います。

 

莫大な初期費用を借り入れて開業すると、将来収入が減少した際に資金ショートを起こし、返済が困難になる可能性があります。

 

最初から必要最低限の設備や医療機器だけを導入しつつも、医療サービスの質は維持するという考え方が賢明です。

 

ミニマム開業を選択すると、少額の資金でスタートできるため、将来のリスクを軽減し、経営の安定につながります。

 

②経営の安定性と精神面の余裕

ミニマム開業によって初期費用や固定費を抑えられれば、一定の運転資金を確保することが可能です。

 

これにより開業後の経営が安定しやすくなり、精神面でも安心感が生まれます。

 

特に、新規開業の場合は患者数を確保することが課題であり、少ない患者数でも経営が成り立つような仕組みづくりが求められます。

 

患者数の増加に時間がかかる場合や、競合クリニックが存在する状況でも、余裕を持って診療に取り組むことができます。

 

③成長の基盤を築く機会

ミニマム開業は、身の丈にあったコンパクトなクリニックから始め、経験を積みながら成長していく基盤づくりにもなります。

 

少ない患者数から運営していくことで、開業医としての集患ノウハウやクリニックの運営方法を実践的に身につけていくことが可能です。

 

より控えめなスタートでクリニックを営み、事業が軌道に乗ってから設備や医療サービスを拡大させていくことも考えられます。

 

この段階的な過程は、クリニックが着実に成長する道筋を開くものです。

 

④変化に対応できる経営者としての医師

事前の市場調査を周到に行ったとしても、開業後に起こる環境変化や競合増加といった不測の事態には備えなければなりません。

 

初期段階からコストを切り詰め、柔軟性のある経営スタイルを選択することは、さまざまな変化に打たれ強い経営体質を培います。

 

人々の健康や命を守る職業でありながら、経済的なリスクを防ぐ経営者としての能力向上にも期待できます。

 

このように、ミニマム開業は、クリニックをスモール地点から徐々に成長させる柔軟性とリスク回避の手法として、多くの医師に選ばれる理由となっています。

コストを抑えた開業手法

コストを効率的に抑え、限られた資金やリソースを最適化することで、クリニック開業のハードルを下げることができます。

 

小規模ながらも持続可能なクリニック経営を実現するためには、以下のようなアプローチが有用です。

 

◆開業時のイニシャルコストを抑える

ミニマム開業の基本は「初期費用」を抑えることです。

 

物件選びでは、アクセスの利便性や潜在的な患者数を考慮しつつ、初期費用が軽減できる省スペースのテナントが有力候補になります。

 

例えば20坪前後のスペースでもクリニックを開業することは可能です。

 

診察室や処置室、待合室などの設備に費用の多くを割り当て、診療と患者サービスに直結する領域の機能を充実させます。

 

レイアウトは、患者様とスタッフの動線をスムーズにし、無駄なスペースを省きましょう。

 

コンパクトな設計により、内装工事費の節約分を運転資金に充てることができます。

 

医療機器についても、開業時は必要最低限の機器を導入し、患者数や必要に応じて段階的に追加していく方針が有効です。

 

あくまでも適切な医療サービスの提供を前提とした上で、イニシャルコストを抑えるようにしましょう。

 

◆開業後のランニングコストを抑える

開業後の「維持費用」を抑えることもミニマム開業には欠かせません。

 

電気や水道などの固定費についても、必要性と無駄な使用を見直し、節約につながる工夫を探りましょう。

 

集患のための広告やマーケティングは効率的に行い、費用対効果を向上させることが大切です。

 

また、人件費の管理もランニングコストを抑制するポイントです。

 

有能で信頼できるスタッフを雇用し、効率的な業務プロセスやシフト体制を導入することで、過剰な労働力の発生を避けることができます。

 

ただし、給与を抑えるのではなく、適正な賃金を支払い、長期間働いてもらうことが結果的に得策です。

 

安定した雇用関係はクリニックの信頼性向上につながります。

 

スタッフの働きやすい環境づくりを通じて、集患を見据えた医療サービスが定着し、人件費を有効に活用できるでしょう。

ミニマム開業の実行ポイント

開業のリスクを最小限に抑えるには、具体的にどのような手立てを講じるべきなのでしょうか。

 

ミニマム開業を実行するポイントをみていきましょう。

 

◆事前の市場調査とニーズ分析

事業計画を策定する前に、地域の市場状況や診療ニーズを綿密に調査しましょう。

 

競合クリニックの存在や地域の人口統計などを分析し、提供する医療サービスが求められやすい環境にあるかどうかを把握します。

 

ニーズに見合った医療体制をどの程度まで整えることができるかは、開業リスクを意識する上で重要です。

 

◆デジタルマーケティング戦略の採用

開業時の広告や宣伝においては、デジタルマーケティングが手軽で効果的です。

 

ソーシャルメディアやWEB広告を活用して潜在患者層にアプローチし、効果的な広報活動を展開しましょう。

 

リーズナブルな予算で広告効果を最大化することがポイントです。

 

◆小規模スタッフと柔軟な雇用態勢

初期段階では必要最低限のスタッフ数で効率的な運営を目指しましょう。

 

運営が軌道に乗り始め、患者数の増加が見込める段階でスタッフを増強するなど、必要に応じて雇用を行う柔軟性が肝要です。

 

これにより、当面の人件費を抑えながらも医療の質を維持することができます。

 

◆クラウドベースのITシステム導入

ミニマム開業のポイントの一つは、クラウドベースのITシステムを導入し、コストを抑えつつ業務を効率化することです。

 

電子カルテやスケジュール管理、経理などをクラウド上で一元管理することで、スムーズで迅速な業務遂行が可能となります。

 

余力があれば、新しい医療技術や診断ツールを導入することで、小規模ながらも先進的なクリニックとして位置づけることができます。

 

患者様にとって魅力的な医療を提供することは、競合クリニックとの差別化になるでしょう。

 

◆診診連携と病診連携の早期構築

複数の診療科に受診する必要のある患者様に対し、各専門分野のクリニック間による「診診連携」は有効なしくみです。

 

お互いの専門性を活かして診療にあたる連携を早期に構築しましょう。

 

同様に、クリニックと地域の基幹病院が緻密に連携する「病診連携」も、包括的で一貫性のある医療を提供できます。

 

このような連携によって検査施設や診療設備を共有することで、コストの削減とクリニックの医療サービス拡充が見通せます。

ミニマム開業でリスクを抑え、クリニックの安定と成長を目指しましょう

ミニマム開業は、経済的なリスクを抑えながら、クリニック運営の安定と成長を目指す戦略的な開業手法と言えます。

 

最小限の資金でクリニックを立ち上げつつも、将来の拡大を見据えた計画性を持つことが肝要です。

 

クリニック開業のハードルを下げるためにも、本文でご紹介したミニマム開業の実行ポイントをぜひご参考ください。

 

 

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