労働人口が減少に転じているなか、多くの企業が人手不足に悩んでいます。そこで「高齢者に活躍してもらおう」としていますが、当の高齢者からは渋る声が聞こえてきます。その理由とは?
もっと働いてくれませんか…人手不足に悩む〈月収70万円・48歳課長〉、〈再雇用・66歳元上司〉に懇願も、思わず絶句する「断り文句」 (※写真はイメージです/PIXTA)

企業の4割は「人手不足が深刻な状況」

東京商工会議所が全国47都道府県、2,000を超える企業から回答を得た『人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査』によると、「人手が不足している」と回答したのは63.0%。

 

さらに人手不足と回答した企業に、人手不足の深刻度をたずねたところ、「非常に深刻(事業運営に深刻な影響があり廃業の恐れがある)」が4.2%、「深刻(事業運営に影響があり、今後の事業継続に支障が出る恐れがある)」が61.3%。合わせて65.%が「人手不足で深刻な状況」だと回答しました。その数は、企業全体でみると4割に相当します。

 

また人手不足の状況を業種別にみていくと、不足83.3%と最多となったのは「運輸業」。2024年問題と騒がれていましたが、決して解消したわけではないようです。続いて79.2%で「建設業」、72.7%で「宿泊・飲食業」、63.9%で「介護・看護業」、57.7%で「製造業」と、多くの業界で半数以上の企業が人手不足を訴えています。

 

深刻化する人手不足問題。その解決のために期待されているのがシニア人材。多くの企業で60歳定年となっていますが、来年には65歳まで雇用確保が義務化となり、そして現在、70歳までの就業機会の確保が努力義務となっています。希望すれば長く働ける環境を整えるとともに、人手不足問題を解消させるための動きです。

 

大手メーカーの課長として活躍する加藤豊さん(仮名・48歳)。課を任せられるようになって5年ほど経つといい、現在、月収は70万円、賞与も含めた年収は大台にのり、満足のいくサラリーマン人生を謳歌しているといいます。

 

一方で悩みの種は人手不足。昨今、退職者や休業者が相次ぎ、人手不足は慢性化。各々のチームから人材補充のリクエストは来るものの、なかなか補充が叶わないまま、その穴を各社員に埋めてもらうという悪循環になっているといいます。

 

そこで加藤さんも目を付けたのが再雇用人材。加藤さんの会社では60歳が定年ですが、9割近くが継続雇用を希望。再雇用後は希望すれば70歳まで働くことができるといいます。

 

人手が足りず、長時間の残業が常態化……その打開策のひとつとして、再雇用で働く66歳の元上司に「もう少し長く働くことはできませんか?」とお願いしてみたといいます。