クリニックの設備は「人への優しさ・配慮」が大前提
内科のクリニックの内装で大前提として気をつけるべきポイントは、やはり「人への優しさ・配慮」です。つまり、患者さんがクリニック内で事故を起こさないための工夫です。
たとえば、受付台が四角く角があるものであれば、角にぶつかったご高齢の方が骨折したり、それが引き金になって動けなくなってしまったり…といったリスクがありますので、必ず角は丸く加工しなければなりません。それは診察室の机や椅子の場合も同様です。
いまはファッション性を重視した内装にこだわる方も非常に多いのですが、たとえば椅子は、ファッション性を重視しすぎると、転倒などのリスクが高いものを選んでしまう可能性もあります。その一方で、内科というのは患者さんからすると基本的には「行きたくない場所」なので、診察室がカフェのようなリラックスできる空間であることを求められる場合もあるでしょう。つまり、安全第一で清潔感があり、患者さんが親しみやすい柔らかなイメージの空間づくりが内科には求められるのだといえます。
また、とくに内科の場合、お子様から高齢の方までが来られる場所なので、入口に段差がなく安全に通れるか、車椅子やベビーカーが通れる広い通路か…といった、バリアフリーの観点も、大前提として押さえておく必要があります。
新型コロナウイルスに配慮した設計・レイアウトも浸透
現在は、新型コロナウイルスに対応した設計をご所望されるケースも少なくありません。そのような場合、たとえば入口はひとつでも、入ってすぐのスペースにちょっとした隔離室を作るなど、できる限りの範囲で対応することが多くあります。
インフルエンザやコロナウイルスの患者様に対応する先生の場合、必ず「隔離室を設置したい」というご要望があります。同じ待合室のなかに高熱で咳き込んでいる患者さんがいると、ほかの患者さんが不安になってしまいます。
そういった観点からも、隔離室を作ってスペースを分けるレイアウトは一般的になっています。コロナ流行前は、待合室はカーテンなどで仕切って患者さんを分けていましたが、コロナ流行後は医療機関に対して補助金が出ましたので、そこで内装を整備する動きがあり、隔離室を作ろう、という流れになったのです。
機器の導入には常にスペースを考慮して
内科の内装については、ほかにも留意すべきポイントがいくつかあります。
設備面での話になりますが、最近はプライバシーへの配慮のため、名前でなく番号で呼ばれることが増えてきました。その場合、患者様がすぐにご自分の順番がわかるよう、モニターを設置する必要があります。
とくに内科の場合、診察室がカーテンで仕切られているだけの構造となることも多いので、ほかの患者様に聞こえてしまいそうで、症状がいいにくいという事情もあります。その場合、名前で呼ばれるよりも番号で呼ばれたほうが、抵抗が少ないというメリットがあります。
ただし、モニターを導入するには、モニターにつながるパソコンやタブレットなどの機器が必要となり、それらの機器は受付に置かれることが多いので、受付周りのスペースの確保も留意すべきポイントとなります。いまはクリニックに必要な電子機器が非常に増えているので、受付周りの配線が乱雑になっているケースも少なくありません。そうした部分を考慮に入れることも設計上、押さえるべきポイントになります。
自動精算機を導入する際は「導線」に注意
内科のクリニックの場合、コロナの影響で、求人広告を出してもスタッフが集まりにくい傾向があります。医師や看護師に限らず、受付スタッフも対面で接する以上、やはり感染のリスクにより、求人が非常に難しいという問題を抱えているのです。
そうすると、少ないスタッフのなかでいろいろな仕事を回していかなければいけません。そのためには、清算は自動精算機にする、問診も事前にウェブ上で完結する形にするといった、スタッフの手間を軽減する、さまざまな方法の導入が必要となります。
その場合、対応する機器がどうしても増えてしまうのがネックとなります。たとえば自動精算機の設置は、大きな総合病院であればあまり気になりませんが、スペースの限られたクリニックでは、かなりの場所を取られてしまいますし、見た目も圧迫感があります。そのため、将来的に自動精算機を導入することを考えているなら、患者様がどこで清算して出口に向かうか、という導線に気をつけなければいけません。建築会社にも、その点をしっかり伝えておく必要があるのです。
このように、内科のクリニックを開業するうえでは、多くの考慮すべきポイントがあり、将来的な計画まで見越した設計が必要です。予算や設備の問題を解決するためにも、設計の担当者とはしっかりとした打ち合わせをするようにしてください。
株式会社Metal Design 一級建築士事務所