株価の乱高下に「心臓がいくつあっても足りない…」
佐藤さんがまず話を聞いたのは職場の同僚。若い頃から資産運用をしてきたコツコツ派と評判で、正直、薄給な職場ながらもマイホームを購入し、すでに完済しているとか。
難しい話はわからなかったものの「来年はバブルの頃を超えるかもしれませんね」の言葉が強く印象に残っているといいます。
――バブルくらい知っていますよ。すごかったですからね。それを超えるというのだから、確かに投資を始めるなら今なのかもしれないですね
退職金400万円。65歳からもらえる年金は月15万円程度になる予定。これでも、いつまでも仕事を辞めることができない。少しでもお金を増やさないと……そういう想いから、退職金400万円をただ預けるだけではもったいないと、どどーんと投資に回ることにした佐藤さん。すべて日経平均に連動する投資信託につきこんだのだとか。
それが昨年の12月のこと。日経平均は3万3,000円台。年が明けた1月には3万6,000円台、2月には3万9,000円台、そして3月には4万円台を突破。「同僚のことを信じて、本当によかった」と、自画自賛していた佐藤さん。
しかし、8月上旬の大暴落で「もう終わった」と思った佐藤さん。このときは、思わず同僚に「お前を信じたばかりに。俺の老後をどうしてくれる!」と逆恨みをしてしまったといいます。そこから持ち直して、8月下旬に3万8,000円台に。新首相誕生でご祝儀相場を期待する声もありましたが、ふたをあければ予想外の展開に。
――おいおい、石破さん、ほんと、頼むよ……
――これじゃ、いくつ心臓があってももたない
そして、再びの株価暴落で、また悶絶。同僚から「一喜一憂してはいけない」とアドバイスされたものの、気が気でないといいます。
金融広報中央委員会『金融リテラシー調査(2022年)』によると、商品性を理解せずに投資信託を購入した人は29.7%。おおよそ3人に1人が、不勉強なまま投資信託を購入しています。
特に退職金を手にし、この大金をどうすべきか定まっていない定年退職者。少し先の未来には老後が迫っているなか、将来不安も大きい……そのようなときに儲け話を聞き、退職金をすべて投資に回してしまうケースも珍しくありません。
確かに退職金をすべて預けておくだけというのは問題かもしれませんが、まずは自身がどれほどのリスクなら許容できるのかを知ることが、資産運用の第一歩です。
[参考資料]