がんはお金がかかるという印象が強い病気、がんへの備えはがん保険と考える人は少なくないでしょう。一方で、がん保険に加入していなくても、健康保険証があれば誰でも申請することができる保障があることをご存じでしょうか。本記事では、フリーランスで働く水谷さん(仮名)の事例とともに、がんでかかるお金と、公的保障「高額療養費」について、株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏が解説します。
大部屋に8日間入院で“請求額50万円”…乳がん罹患の年収450万円・40歳女性「病院食に1回460円は高い…」【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

知らなければ使えない

日本の社会保障制度には、高額療養費のようにとても手厚い保障が得られるものが存在し、安心感があります。しかし、いざというときに、その安心を得るためにとても大事なことがあるのです。それは、そういった制度(保障)があることをあらかじめ知っておかなければ使えないということです。

 

日本の公的保障や救済制度は申請ベースのものが多く、本人から手続きしなければその保障を得ることはできません。また、高額療養費に関しては、加えて知っておくべき点として以下の3つがあります。

 

1.時効は2年

2.あくまで対象は医療費のみ

3.事前申請で立替払いが不要になる

 

まず(1)についてですが、高額療養費に関していうと、時効が2年間という注意点があります。今回の事例の水谷さんは半年前の入院についての申請であったため問題はありませんでしたが、もし2年を超えていたら40万円のキャッシュバックの権利は消滅していました。

 

次に(2)について。この制度はあくまで医療費自己負担額が対象のため、入院中の個室代や食事代などは対象外で発生した費用はすべて自己負担となります。入院しても高額療養費があるから「すべての入院費の自己負担額は10万円程度ですむ」と誤った理解をして、高額の個室を利用した場合に思わぬ自己負担額を請求される可能性があります。

 

最後に(3)、実は高額療養費は事前申請することもでき、立替払いを不要にすることが可能です。

 

このように入院時にはとても手厚い保障が得られる高額療養費ですが、いまあげたような一定のルールがあり、このいった知識事項を事前に知っていなければ、その恩恵を受けることができなくなる可能性があります。

 

がんが心配になったのでがん保険に加入する、そう考える方も少なくありません。しかしその前に日本の社会保障制度を正しく知ることが大切です。今回の事例のような早期がんでの短期入院の場合、自己負担額は想像以上に低く抑えられる可能性があります。