1回目:高市総理を期待し、円安進む
1回目の投票で、高市氏と石破氏の決選投票が決まったときには、145円台であったドル円相場は円安方向に進み、14時30分過ぎには146円台半ば近くをつけた。また同時刻には、日経平均株価は3万9,777円をつけた。高市氏が金融緩和政策の継続を主張しているため、日銀が追加利上げに動きにくくなるのではないかという思惑と、積極財政政策が採られるとみられたのだろう。
2回目:石破総理誕生で、円高へ巻き戻し
2回目の投票では逆転で、石破氏が新しい自民党総裁に当選した。ドル円レートは急激に円高方向に戻し、143円台前半での推移となった。石破氏は金融政策については口出ししないとみられるので、高市氏との金融政策への対応の違いが意識されたのではないか。
日経平均先物下落
なお、日経平均株価は14時30分過ぎにつけた値から一旦やや低下したものの、新総裁への期待もあってか、終値は3万9,829円の高値引けとなった。しかし、高市氏のプレミアムが剥落し、3円程度円高に戻ったので、海外では日経平均先物が下落したようだ。最近の傾向として、1円の円高で300円強日経平均株価が下がる関係がある。
石破総理に期待されること
石破氏の、総裁選に向けた政策として、「経済あっての財政」を掲げ、デフレ脱却に向けて成長分野に官民挙げて投資を行い、成長を促すとともに、財政健全化も進める考えを示している。また、デフレ脱却最優先の経済・財政運営を行い、成長型経済の実現を図るとしている。早急に経済対策を策定し、成長戦略をとりまとめ、実現に向けて取り組むとしている。
石破氏は、防衛問題のほかに、防災や地方創生にも精通していると言われている。さすがに山陰新幹線の必要はいまはないだろうが、これらの分野での政策対応が期待される。
石破氏が具体的にどのような経済政策を今後打ち出すかは要注目だろう。
なお、石破氏は確かNHKの討論会で、「物価高を超える賃金上昇をどう実現するかに対し、労働分配率を上げ、賃金を上げていくことが、一番即効性がある」と回答していたが、賃上げの持続性の面からは併せて労働生産性を高める政策が必要だろう。
※本記事は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。