長年連れ添った夫婦。もしどちらかが先にこの世を去ったら……。一人で暮らしていけるだろうか、お金は足りるだろうかと、不安になることでしょう。亡くなった配偶者が元会社員である場合、残された側は遺族厚生年金が受け取れますが、そこにはよくある誤解があって……。 本記事では、Aさんの事例とともに、遺族厚生年金の注意点についてCFPの伊藤貴徳氏が解説します。
えっ、遺族年金は4分の3もらえるはずじゃ…70歳夫を亡くした66歳元共働き妻、驚愕。何度見ても信じがたい年金額に「お願い、なにかの間違いだと言って」 【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

老後の生活費の目安

生命保険文化センターの調査によると、夫婦2人で老後生活を送るうえで必要と考える最低日常生活費は、月額で平均23万2,000円となっています。分布をみると「20~25万円未満」が、27.5%と最も多くなっています。また、「ゆとりのある老後生活費」は平均37万9,000円となっています。老後どのような生活スタイルを望むのかは人それぞれですが、望む生活を実現させるための資金準備には長い期間がかかることもあります。

 

あらかじめ皆さんの考える老後生活に向けた生活費の計算を行っておくことが大切です。

生活費が足りないと感じたら

多くの方が老後に向けて年金を頼りに生活設計を考えていますが、実際には「年金だけでは生活が厳しい」と感じるケースも少なくありません。特に年金額が予想よりも少なかったり、物価の上昇や医療費の増加に伴って支出が増えたりすると、年金だけでは十分に生活を支えることができない可能性があります。

 

1.退職後も働く「シニア雇用」や「パートタイム」の選択肢

老後もできる範囲で働くという選択肢があります。多くの企業がシニア向けの雇用制度を提供しており、定年後も継続して働ける「再雇用制度」や、パートタイムで働く機会が増えています。仕事を続けることで、年金の受給額だけに頼らず、生活費を補うことができます。また、働き続けることで社会とのつながりを持ち続け、心身の健康を保つ効果も期待できます。

 

2.年金以外の収入源を確保する

年金以外の収入源として資産運用も有効です。老後に備えて、これまでの貯金などを元手に資産運用を行うことで、将来的な生活資金を増やすことが期待できますが、資産運用は長期で行うことが求められます。そのため、老後に入ってから資産運用を始めた場合、思った成果が期待できなかったり、値上がりを追求するあまり自分のリスク許容度に見合わないハイリスク商品を選んでしまったりすることも考えられます。老後を迎えてから、初めて資産運用を行う際には注意が必要です。

 

3.老後の生活費を支えるための節約術

収入を増やすだけでなく、支出を抑えることも重要です。老後の生活費を見直し、無駄な出費を削減することで、年金やそのほかの収入でも生活を維持しやすくなります。

 

〈節約のポイント〉

・公共料金の見直し(電気・ガス・水道のプラン変更や節電)

・不要な保険の解約や見直し

・外食や娯楽費を控え、家での調理や趣味を楽しむ

・シニア向けの割引サービスや特典を活用する

 

老後の生活を安心して過ごすためには、まずは年金の仕組みを理解し、早い段階で計画を立てることが重要です。Aさんのように、夫の死亡後の年金が想像していた額よりも少なかったという状態になってしまうと、生活できなくなることにもつながりかねません。対策や選択肢を知っておくことで、生活の不安を減らすことができます。