日本は地震、台風、水害など、自然災害の脅威に常にさらされています。今後いつ自分や家族が被災者になるかわかりません。来るべき時に備えてさまざまな準備をしておかなければなりませんが、どんな事態になったとしても必要になるのが「お金」です。そこで今回は、被災した時に起こりうるお金に関するトラブルとその対策、そして日頃の準備について、村井美則FPがお伝えします。
通帳や印鑑・キャッシュカードを紛失したら?口座にログインするIDやパスワードはどうやって管理する?今知っておくべき「被災時のお金の知識」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「印鑑レス・通帳レス口座」のメリット・デメリット

通帳や印鑑を紛失する心配をなくすための一案として、通帳や印鑑をなしにする「印鑑レス・通帳レス口座」へ変更する方法があります。

 

印鑑レスにすると、窓口での出金はキャッシュカードと暗証番号だけでよくなり、印鑑を持ち歩く必要がなくなります。また、記帳のために銀行の店舗に行く必要もなくなり、入出金明細もインターネット上で閲覧することができます。銀行によってはお得なサービスを受けられる場合もあります。

 

こうしたメリットがある一方で、デメリットもあります。例えば、入出金明細のインターネット上での閲覧は期間があり永久的ではないため、データを保存したい方は閲覧期限前にダウンロードする必要があります。また、口座の名義人が急に亡くなった場合、口座の存在を親族が知らず、相続が遅れてしまう場合もあります。

 

また、印鑑レス・通帳レス口座は災害時に紛失したり悪用されたりする心配がないと言う面はありますが、残高確認等のためにはインターネットバンキングの利用が必須となります。

 

その際に重要なのが、口座にログインするためのIDやパスワードの管理です。筆者個人の見解ですが、IDやパスワードを紙に書くことはおすすめしていません。紙を紛失した場合のリスクは極力排除する必要があるからです。そうなると別の方法でIDやパスワードの管理する必要がありますが、すべてを覚えておくというのは至難の業です。

 

では、どうすればいいのでしょうか。例えば、三井住友銀行では「SMBCデジタルセーフティーボックス」という機能を使うことで、IDとパスワードを自分だけが見られる状態で保存することができます。万一の際は家族も確認できます。月額料金はかかりますが、こういったサービスを使うのも一案です。

 

その他の方法としては、スマートフォンやパソコンで生体認証をあらかじめ登録するすることで、本人以外はログインできないように設定することができます。また、アプリを用いて2段階認証でログインする方法や、パスワード管理アプリやクラウドを使うといった方法もあります。

 

いずれにしても、災害でIDやパスワードがわからなくて口座にログインできない状態にならないように、日頃から管理しておくようにしましょう。

 

今はログインIDやパスワードを勝手に変更され、口座からお金が盗まれるフィッシング詐欺などの犯罪もありますので、そうした犯罪に巻き込まれてないか確認するためにも、不必要にネット上のサイトに銀行口座情報を入力しないことが大切です。また、定期的に金融機関の口座にログインができるかを確認すること、残高をチェックする癖をつけることを意識しましょう。

 

店舗がないネット銀行でキャッシュカードを紛失したら?

ネット銀行を使っている人も最近は多くなりました。店舗を持たないネット銀行の場合、もし被災してキャッシュカードを紛失したら、まずはコールセンターへ相談しましょう。店舗のある自身の他行口座へ振り込み対応ができる場合があります。

 

便利な方法として、キャッシュカード不要でスマートフォンで生成したQRコードをかざすことで、コンビニATMから出金する方法もあります。

 

ネット銀行はメガバンクに比べて定期預金の利率などがよくお得ですが、災害には弱いというのが実情です。自分の使っているネット銀行が災害時にどういった対応するのか調べるなど、情報を確認しておくとよいでしょう。