がんはお金がかかるというイメージが強い人も多いでしょう。ただ、具体的にどのようなところでどの程度お金がかかるのかは意外と知られていないかもしれません。本記事では小林さん(仮名)の事例とともに、がんに備えるための保険の注意点について、株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏が解説します。
3人の子を寝かせたあと、押し寄せる途方もない不安…40歳パート主婦、年収750万円の40歳夫が「悪性リンパ腫」に。がんがなければ絶対に気づかなかった驚愕事実【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

想定されにくい収入減のシナリオ

夫ががんに罹患し医療保険、がん保険から給付を受けられると思っていたところ、夫のすべての保険の保険料が免除になるということを聞き、安堵した事例の小林さん。

 

夫の入院期間は約4ヵ月ということで、夫の会社の有給休暇がなくなったあとは、家計が赤字になる見込みでしたが、いままで払ってきた毎月4万円以上の保険料負担が消滅することに。小林さんの保険の担当者はがんが気になるならば「がん保険から治療費のお金を受け取るだけでなく、収入が減少してしまうリスクに備えることもがんでは重要です」というアドバイスをしていましたが、実際はどういうことなのでしょうか。

 

そのポイントのひとつとして、がんにはこれまでできていた仕事ができなくなる可能性があり、当たり前のように得られていた毎月の収入が減少(消滅)するリスクがあるという特殊性があります。がんはどうしても治療費で金がかかるというイメージがありますが、収入が得られなくなり毎月の生活費に困窮するリスクは見落とされがちです。

 

有休休暇がなくなった後のこと

がんは以前に比べると通院で治療ができるようにもなってきており、入院日数は短期化の傾向があります。そのためおおむね1ヵ月以内に退院し、仕事に復帰できるという前提で考えられ、短期入院とその後の通院治療費をがん保険などで備えれば十分という考え方をする人もいます。

 

ただ平均として入院は短期化していますが、がんの種類によっては長期入院という展開となり給休暇を使い切り、傷病手当金を受給し毎月の収入が減少、それに対して貯蓄の取崩しというシナリオも押さえておく必要があります。

 

もとフジテレビのアナウンサーで、2019年にフリーに転身した直後に悪性リンパ腫にり患した笠井伸輔さん。笠井さんは様々な場で自らのがんのことを公表し、がん保険などの備えの重要性を訴えています。笠井さんも悪性リンパ腫が発覚後、入院が4ヵ月半におよんだそうことです。

 

通院治療であれば仕事との両立、すなわち治療しながら稼ぐということも可能な場合があります。ただ入院状態ではそれはかなり困難です。

 

厚生労働省の令和2(2020)年患者調査によると、がんでの平均入院日数は20日程度となっており、がん保険のパンフレットにもそういったデータが載っていますが、あくまで平均値という認識は必要です。

 

一般的な会社員の場合、入院をしたときには有給休暇を利用し、2ヵ月程度は基本的な収入が保障されますが、それを使い切ってしまった場合、健康保険の傷病手当金制度を利用しおおむねそれまでの50~60%程度の給付金を最大1年半受給することができます。