がんはお金がかかるというイメージが強い人も多いでしょう。ただ、具体的にどのようなところでどの程度お金がかかるのかは意外と知られていないかもしれません。本記事では小林さん(仮名)の事例とともに、がんに備えるための保険の注意点について、株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏が解説します。
3人の子を寝かせたあと、押し寄せる途方もない不安…40歳パート主婦、年収750万円の40歳夫が「悪性リンパ腫」に。がんがなければ絶対に気づかなかった驚愕事実【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

突然夫に悪性リンパ腫が発覚

その後は大きなアクシデントなく、家事や子育てと忙しいながらも充実した日々を送っていた小林さん。夫も今年に入ってから仕事が非常に忙しくなり、残業で帰宅が遅くなることが多くなっていました。

 

体調不良を感じた当初、夫は「疲労がたまっているせいだろう」と思っていましたが、2ヵ月ほど前から、だるさや食欲不振の症状が強くなってきたため受診をしました。すると、医師から精密検査をすることを勧められます。

 

そして約1ヵ月の精密検査期間を経て、先日医師からまさかの「悪性リンパ腫です」の告知が。悪性リンパ腫とはいわゆる血液のがんといわれるもので、著名人でも罹患する人の話をインターネット上で目にします。主治医からは早期の入院を勧められましたが、どうしていいかわからなかった小林さん夫妻、その場で主治医の勧めに従い入院することを決めました。

 

どうやら入院は数ヵ月におよぶそうです。夫が入院後も日中は家事や子育てに忙殺されものを考える余裕もありませんが、夜子供が寝たあとひとりになったときに、今後のことについて猛烈な不安が頭をよぎります。

 

担当者が教えてくれたこと

夫が入院して2週間ほど経過。夫の治療も順調に進んでいるようで、ようやく現実を受け止められるようになってきた小林さん。入院が数ヵ月におよぶことになり今後のお金のことにも不安があったため、加入中の保険の確認などのために保険証券を手に、4年前に保険の見直しをした近所の保険ショップへ。

 

「がん保険、入っていましたよね?」という質問から、4年前に丁寧に対応してくれた担当者にどの保険からどのくらいお金が受け取れるか確認してもらうことに。担当者からは、夫は入院で治療を受けているため、加入中の保険のうち医療保険とがん保険が対象で死亡保険は支払い対象外と告げられました。最終的な金額は入院日数に応じて変わってくるため変わってくるものの、少なくともがん保険は「診断給付金100万円」の保障があるため、それは現時点でも請求すれば受け取ることができるということです。

 

さしあたり100万円というまとまったお金を受け取れることがわかりホッとした小林さん。実は入院が長期化するため、夫の会社の有給休暇は入院の途中ですべてなくなってしまうことが確実。すると健康保険の傷病手当金から給付があるということですが、毎月の収入はいままでの半分程度になってしまうということで、100万円の保障は非常に助かります。

 

約500万円の貯蓄はありますが、これは子供の今後の教育資金に充てていくものなので、治療費で取り崩すことは小林さん夫妻も避けたいと感じていたところです。ただ100万円の保障のほかにもっと大切な保障が付加されていることを伝えられ、小林さんは驚きます。

 

保険料払込免除特約

「お金を受け取れる対象は医療保険とがん保険だけですが、加入するすべての保険(死亡保険、医療保険、がん保険)の毎月の保険料がすべて免除になります」

 

「保険料が免除?」最初なんのことかわからなかった小林さん。

 

担当者の説明によると、小林さん夫妻が加入したすべての保険には『保険料払込免除特約』が付加されているため、がんの診断を受けた時点で、夫の加入保険に関してはその後の保険料負担がなくなるとのことです。もちろん今後の契約期間、保障はなにも変わらずに受けることができます。

 

いろいろと説明を受けてようやく4年前に保険相談をしたときのことを思い出した小林さん。

 

「がんの備えはしっかりしたい」といった小林さんに対し、「がん保険から治療費のお金を受け取るだけでなく、収入が減少してしまうリスクに備えることもがんでは重要です」と保険料払込免除特約をプラス数百円で付加する選択肢を伝えられ、念のために付加していました。

 

傷病手当金を受給することになれば、毎月の家計が赤字になることは確実であったため、夫の生命保険料約4万7,000円がなくなることは非常に助かります。後日あらためて保険の請求手続きに担当者のもとへやってきた小林さん。

 

「ひとまず夫の毎月の保険料がなくなったのは助かりました。夫のがんがなければ、保険料払込免除特約のことは絶対に忘れていました」もしものために加入していた保険ですが、夫のがん罹患により、初めてその役割を実感したそうです。