エンジニアとして優秀だとしてもマネージャーとしてうまくプロジェクトを運営できるとは限りません。「経験と勘と度胸」を頼りにした、自己流でのマネジメントには限界があります。では、「できるプロジェクトマネージャー」になるためには、何が必要なのでしょうか。小山透氏の著書『常勝! プロジェクトを成功に導くマネジメントの定石 立ちはだかる壁を乗り越えるプロジェクト成功の鍵とは』(ごきげんビジネス出版 ブランディング)より解説していきます。
30代・優秀なエンジニア、重大プロジェクトのマネージャーに意気揚々就任も…「デスマーチ」に陥りうつ状態に。全然うまく行かない根本原因【勤続46年・元ソニー社員が解説】 写真はイメージです/PIXTA

限界を感じる自己流の進め方

なぜ今までの「経験と感と度胸」だけでは、プロジェクトを思うように進められないのでしょうか。

 

企業においては、プロジェクトが発足すると、事業部長や部長などのプロジェクト・スポンサーがプロジェクト・マネジャーを任命します。プロジェクト・マネジャーは、エンジニアの経験が豊富で、そろそろマネジャーができそうと上司に認められた人が任命されます。

 

たとえばエンジニアとして入社したAさんは、30代後半になると経験も豊富で職場でも活躍し、上司から呼び出され「来年は、会社の将来を左右する重要なプロジェクトが発足する。プロジェクト・マネジャーをやってくれないか。優秀なきみにお願いしたい。よろしく頼むよ」と、こんな感じでしょうか。

 

Aさんはエンジニアとして優秀で成果も残してきましたが、マネジメントとなると基本的な教育は受けたことがありません。今までメンバーとして参画し、プロジェクトの進め方を見てきただけで、独自で学んだ方法で進めるしかありません。

 

これが失敗の原因となります。これまでは、メンバーとして自分の考える進め方や方法で思うような成果が出ていたとしても、プロジェクト・マネジャーの立場で運営しようとすると、プロジェクトは計画どおりに進まないものです。ひとつの問題を解決しても次から次へと問題が発生し、「もぐら叩き状態」となります。その後プロジェクトは「デスマーチ(死の行進)」に陥るのです。

 

プロジェクトは炎上し、メンバーからは不信感が募り、自分には何が足りないのか悩みはじめます。心身ともに疲弊し、うつ病という最悪の状態に陥るケースもあり得ます。自己流の進め方や方法では限界があることに気づかされるのです。マネジメントスキルは別と考えたほうがよいでしょう。