試行錯誤を繰り返し、振り返りと内省
プロジェクトを取り巻く環境は、時々刻々と変化します。変化のスピードが上がっている時代の中で、常に改善を繰り返すことが求められています。試行錯誤を繰り返したあとに内省することです。内省を行なうことで、伸ばすべきポイントや改善点を見つけ、急激な変化にも自然と対応していく力が身につきます。内省は日々の作業に試行錯誤と学習の機会を与えることができます。内省を習慣化できれば、自らの経験を振り返り続けることにつながり、新しい発想に至る可能性もあるのです。それまで気づかなかった作業の進め方やコツをつかむことで、改善や効率化を図れるのではないでしょうか。
内省の類義語として反省がありますが、違いは次のとおりです。反省とは、過去の自分の言動やありかたに間違いがなかったかどうかよく考えることで、内容や改善点を周囲に伝えることを目的としています。一方、内省とは自分の思想、言動などを深くかえりみることで、客観的に自己観察を行なうことです。反省は悪かった点に重点を置いているのに対して、内省はよかった点と悪かった点のどちらも振り返るところが異なります。
よかった点は、自分のスタイルとして今後も継続します。悪かった点は、何が原因でどうすればできるかを考え試行錯誤しながら、できるまで繰り返し実践することです。私たちは、神様やスーパーマンではありません。長所もあれば短所もあります。自分ができていることは強みとして伸ばし、短所は弱みとして克服すればよいのです。人間は成長できる生き物です。できなかったことは、どうすればできるようになるのかを考え、何度も何度も繰り返し実践します。
プロジェクト・マネジャーに必要な人間力
私が2015年のPMI日本フォーラムで講演した際に、人格コンピテンシー(人間力)について、「人格は性格のようなものなので変えられないのではないでしょうか」という質問がありました。「人格は変えることができます」と答えました。京セラの創設者である稲盛和夫氏は、書籍『「成功」と「失敗」の法則』(致知出版社)の中で、「人格というものは、性格+哲学という式で表すことができる。つまり、性格という先天性のものに哲学という後天性のものを付け加えていくことにより人格は陶冶される」と記しています。人格は磨くことができるのです。