働き方改革の施行や労働人口の減少を背景に、日本企業はこの数十年のあいだに大きな変化を迎えました。変化の一つに「理想のリーダー像」があります。本記事では、小山透氏の著書『常勝! プロジェクトを成功に導くマネジメントの定石 立ちはだかる壁を乗り越えるプロジェクト成功の鍵とは』(ごきげんビジネス出版)より一部抜粋・再編集し、日本企業における新たなリーダー像について解説します。
部下に奉仕…日本企業で「尽くすリーダー」が求められるようになった理由【勤続46年・元ソニー社員が解説】 写真はイメージです/PIXTA

「サーバントリーダーシップ」が求められる理由

チームが最高のパフォーマンスを上げるためには、どうすればよいのでしょうか。

 

近年、従来の支配型リーダーシップに対して、サーバントリーダーシップが注目されています。サーバントリーダーシップは、メンバーに対してできる限りの奉仕を行い、それを通じてメンバーの仕事に対するモチベーションを高め、自主的に仕事をさせるように導いていくリーダーシップ論です。「サーバント」には「使用人」「召使い」という意味があります。

 

リーダーが先頭に立ってメンバーをぐいぐい引っ張っていく、従来の支配型リーダーシップとは異なった考え方です。命令して仕事を進めるのではなく、どうすればメンバーのもつ能力を最大限に発揮できるのかを考え、それが実現できる環境づくりやメンバーへの支援を通じて仕事を進める方法です。

 

働き方改革の施行や、労働人口の減少から、現代は従業員個人の多様な価値観が重視されています。事実、個人の多様な能力や経験などの「目には見えない価値」をもつ人材を受け入れ、経営力を上げる「ダイバーシティ経営」を採用する企業が増えています。

 

多様な人材の価値を最大限に生かすには、メンバー同士の密なコミュニケーションと信頼関係構築が欠かせません。マネジャー「個人」の能力ではなく、メンバーの「能力や意志=多様な価値観」を重視するサーバントリーダーシップに注目が集まるようになりました。チームとしての成果が求められる現代において、理想のリーダー像も変化しています。

 

また、デジタル技術の進歩もあります。従来はマネジメント層による的確で合理性のある指示・命令に従えば成果が出ていたため、多くの場合マネジメント層の経験や体験に基づくリーダーシップが重視されていました。しかしデジタル技術の進歩とともに、現代は多くの人が行なってきた仕事が機械やAI(人工知能)に代替される時代となっています。

 

その結果、メンバーには創造的で革新的なアイデアによるイノベーションが求められるようになりました。顧客ニーズの多様化や激しい時代の変化から、これまでマネジメント層が培ってきた経験や体験による指示・命令では解決できない問題も生まれるでしょう。

 

サーバントリーダーシップは、チームの意見や知識、能力をマネジメント層が引き出すため、ひとりでは解決が困難な課題や革新的なイノベーションの創出につながります。