「俺、ショートスリーパーだから」「寝不足の分、土日に寝だめして取り返す」など、眠りに纏わるさまざまな定説がありますが、最新の研究では、覆されたものも多いようで……。本記事では、睡眠研究の第一人者・柳沢正史氏の書籍『今さら聞けない 睡眠の超基本』(朝日新聞出版)より一部を抜粋・再編集し、本当に効果的な睡眠について解説します。
睡眠は貯金できない
睡眠負債は返せてもためておくことはできない
忙しくなる前に、休日のうちに寝だめをしておこうと考える人もいるかもしれませんが、実は睡眠は余分にため込むことができません。睡眠不足を解消するために、あとでたくさん眠ることはできますが、それは慢性的な睡眠不足である睡眠負債を返済しているという状態です。睡眠が完全に充足されるとそれ以上の睡眠をとることはできなくなります。
睡眠負債が積み重なると、「マイクロスリープ」と呼ばれる瞬間的な居眠りを起こす可能性があります。これは数秒から10秒程度の非常に短い睡眠ですが、自覚症状がないため、運転中などに起こると事故につながるリスクが高く、大変危険です。
長時間眠れる場合の原因
人間の睡眠は一定のリズムやサイクルに基づいています。通常、十分な睡眠をとったあとは、身体が自然に目覚め、それ以上眠ることが難しくなります。
睡眠不足が続き睡眠負債がたまると、長時間の睡眠をとることで帳尻を合わせようとします。
睡眠の質が悪い
何らかの原因で眠りが浅く断続的になると、普段の睡眠では十分な休息を得ることができません。
ロングスリーパー
体質的に長時間の睡眠が必要なため、一般的な睡眠時間では十分な休息を得られません。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に呼吸が止まるため深い睡眠をとることができず、いくら眠っても足りない状態に。
「寝だめ」は貯金ではなく返済
週末に長時間眠ることで体調を整える人もいますが、睡眠負債は、週末の寝だめだけでは完全には返済できません。少し返すことができたとしても、そのまま、また平日に睡眠不足になることで、再び借金が膨らみ続けるのです。
柳沢 正史
筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)機構長・教授
株式会社S’UIMIN代表取締役
医学博士
筑波大学医学専門学群・大学院医学研究科博士課程修了後、31歳で渡米し、テキサス大学サウスウェスタン医学センター及びハワードヒューズ医学研究所にて24年間にわたり研究室を主宰。2010年に内閣府最先端研究開発支援プログラム(FIRST)に採択され、筑波大学に研究室を開設。2012年より、文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム国際統合睡眠医科学研究機構を創設。2017年、筑波大学発のスタートアップベンチャー企業「S'UIMIN」を起業。2021年よりムーンショット型研究開発事業のプロジェクトマネージャーを務める。