「たかが睡眠」ではない…睡眠不足によるさまざまな弊害

メンタル・メタボ・認知症・免疫力に影響

睡眠不足が身体に及ぼす影響は深刻です。ジョンズ・ホプキンズ大学は、慢性的な不眠はうつ病を発症するリスクが3倍になると報告しています。また、認知症にかかるリスクは4倍になるという研究もあります。睡眠不足が続くと脂肪が蓄積して肥満や高血圧、糖尿病、脂質代謝異常などを引き起こし、生活習慣病にかかる確率もアップ。免疫力も低下するため、風邪などの感染症にかかりやすくなるだけでなく、体内のがん細胞を排除しきれなくなります。

つまり、睡眠不足は脳の生産性を低下させてしまうとともに、身体の機能も低下させ、その結果、さまざまな疾患を招いてしまうのです。

睡眠不足は一時的に我慢すればいいものではありません。若いときは無理がきくかもしれませんが、将来的に心身の健康に悪影響が出る恐れがあります。

メンタル不調
感情がコントロールしづらくなり、負の感情に対して敏感に。うつ病のリスクは3倍に増加。

認知症
睡眠不足だと認知症の原因物質が脳内にたまりやすくなり、認知症の一因に。

免疫力低下
免疫機能が低下すると、感染症にかかりやすくなり、がん細胞も排除しきれなくなる。

メタボ
睡眠不足により食欲が増加。脂肪がたまり、メタボリックシンドロームを引き起こす。

60種類以上の睡眠障害

睡眠障害は、不眠症、睡眠時無呼吸症候群、過眠症など睡眠に関連した60以上の症状の総称で、7タイプに分けられます。生活の質を低下させ、日常生活に支障をきたすことが多くあります。

睡眠障害の7タイプ

1.睡眠関連呼吸障害群

睡眠中に一時的に呼吸が停止する症状で、睡眠時無呼吸症候群が最も一般的。睡眠の質が低下し、日中に眠気や疲労感が生じることがあります。

2.睡眠時随伴症
睡眠中の正常な筋肉の制御が乱れることで、睡眠中にもかかわらず、行動を起こしてしまう疾患です。夜驚(やきょう)症、夢遊病(睡眠時遊行症)などがあります。

3.不眠症
不眠症は、眠ろうとしても眠れないために、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒など何らかの問題が伴う状態。十分な睡眠がとれず、日中の機能や注意力に影響が出ます。

4.睡眠関連運動障害群
睡眠中に意図せず筋肉の動きが起こる疾患です。むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)(P.84)や周期性四肢運動障害などがあります。

5.中枢性過眠症群
睡眠サイクルや脳内の神経伝達物質の異常により、昼間に過度の眠気が生じます。ナルコレプシーや特発性過眠症などがあります。

6.概日リズム睡眠・覚醒障害群
体内時計の周期が24時間周期と異なるためにリズム障害(P.40)が起きます。睡眠相後退(前進)症候群、不規則睡眠覚醒リズム障害なども含まれます。

7.その他の睡眠障害
睡眠中にてんかん発作が起こる睡眠関連てんかん発作、睡眠中に頭痛が生じる睡眠時頭痛などのほか、環境要因が問題になるものもあります。