「俺、ショートスリーパーだから」「寝不足の分、土日に寝だめして取り返す」など、眠りに纏わるさまざまな定説がありますが、最新の研究では、覆されたものも多いようで……。本記事では、睡眠研究の第一人者・柳沢正史氏の書籍『今さら聞けない 睡眠の超基本』(朝日新聞出版)より一部を抜粋・再編集し、本当に効果的な睡眠について解説します。
睡眠では「質より量」を重視して
「〇時間の睡眠がベスト」はない
睡眠は質がよければ短時間でも大丈夫という話は、はっきり言って間違い。実際には、量が最も重要です。毎晩、たとえ30分でも睡眠時間を増やすことができれば、多くの人が調子のよさを実感するでしょう。
多くの調査で、睡眠時間が7時間の人が最も死亡リスクが低いとされています。しかし、人間は必要以上に眠ることはできません。毎晩9時間以上眠っている人は、もともと睡眠障害や何らかの疾患を抱えている可能性が高いと考えられます。
健康のためには、あくまで自分に必要な睡眠時間を確保するのが重要。7時間がベストという説も、科学的な根拠はないのです。
日常的な睡眠不足に気づきにくいこともある
目覚めがよいと「しっかり睡眠がとれた」と思いがちですが、実際には睡眠量が適切かどうかとは別のことです。眠気が日常的なものとなり、その状態に長期間気づかずにいると、そもそも本来の「すっきりとした目覚め」が何かわからなくなってしまいます。職業や仕事の内容によって、睡眠不足に気づきにくい場合もあります。
細切れ睡眠は睡眠の質が悪い
ごく短い睡眠が断続的に続く細切れ睡眠は、眠りが浅く、睡眠の質が悪くなります。睡眠不足を通勤電車などで眠ることで解消しようとする人もいますが、短い睡眠時間では正しい睡眠サイクルが確立されないため、十分な休息を得ることはできないのです。
仕事帰りなどの遅い時間に電車で眠ると、睡眠欲求が中途半端に解消されてしまい、夜の睡眠時に寝つきが悪くなってしまいます。スマホをチェックするなど、できれば電車の中では起きて過ごしましょう。
レム睡眠をしっかりとることも重要
従来は深いノンレム睡眠が質のよい睡眠のカギであると考えられてきました。しかし、研究が進むにつれて、レム睡眠の重要性も明らかに。不足すると身体や脳に悪影響が及ぶことがわかってきています。
ストレス耐性との関連
カリフォルニア大学のヘルム博士らによる2011年の研究では、参加者に感情が動くような(怖い)画像を見せたあと、睡眠を挟んで同じ画像を再度見せ、それぞれの脳の活動を計測しました。すると、睡眠前よりもレム睡眠後のほうが感情の動きが抑えられていました。
レム睡眠不足は死亡率が上がる
2003年に始まった、ジャズ・ファーマシューティカルズのリアリー博士らによる、高齢男性を12年間経過観察した研究で、レム睡眠の割合が5%減少するごとに死亡率が13%上昇することが明らかになっています。