よく言われる「朝型」「夜型」というくくり。しかし、これはその人個人の特性ではなく、年齢に伴う生物学的特性が大きく影響していて……。本記事では、睡眠研究の第一人者・柳沢正史氏の書籍『今さら聞けない 睡眠の超基本』(朝日新聞出版)より一部を抜粋・再編集し、ライフステージと睡眠の変化について解説します。
「朝起きられない」は当然だった…朝型社会は高校生・大学生・社会人の若者への負担大。「10時始業」導入による驚きの結果【医学博士が監修】
人は眠すぎると人に優しくできない
睡眠時間が1時間短くなるサマータイムのアメリカで判明した驚愕事実
睡眠不足になると、コミュニケーション力や理解能力が低下し、小さなことでもイライラしやすくなることがわかっています。
サマータイムを導入しているアメリカでは、毎年3月の第2日曜日から、11月の第1日曜日の期間が夏時間に切り替わります。夏時間に移行する日は、夜中の2時に時計の針を1時間進めます。つまり、この日は早寝を意識しない限り、睡眠時間が1時間短くなってしまうのです。驚くべきことに、この日だけ寄付金が減少するという研究結果があります。これは、睡眠不足によって他者を思いやる気持ちが抑制されてしまうことを示唆していると考えられます。
アメリカのカリフォルニア大学の研究では、アメリカで2001年から2016年の間に行われた300万件以上の慈善寄付データを分析したところ、サマータイム開始後に募金額が約4%低下していました。一方、サマータイム制を導入していない地域では、募金額の変化は見られませんでした。
睡眠不足だと他者を思いやることができなくなる
睡眠不足の状態では、社会的な認知機能が低下し、他人への共感を処理する能力が低くなります。また、感情の制御も難しくなり、自己中心的な行動を優先する傾向が強くなります。
よく眠れている人は他人に親切にすることが自分の喜びになる
2017年6月に行われた睡眠学会で、国立精神・神経医療研究センターが「睡眠が十分にとれている条件下で人助けを行うと、脳の中で快感を担う領域が活発に活動していた」と、発表しました。あるゲームにおいて、仲間はずれのプレーヤーを助けると、喜びを感じる領域が活発に動くことがわかったのです。逆に、睡眠不足の場合は、この領域の活動は低下していました。