いずれは直面する親の介護問題。介護の月額費用は平均8万3,000円だといいますが、その費用が負担できない場合、できるだけ介護サービスは受けずに、できるだけ自分たちで介護を行う、という判断になるでしょう。しかしその先で新たな問題に直面し、八方塞がりになることもあるようです。
もう無理です…年金月6万円〈寝たきりの81歳父〉を介護する〈46歳ひとり息子〉生活保護申請も通らず絶望。父子が暮らすアパートで「どう生きていけばいいのか」 (※写真はイメージです/PIXTA)

仕事を辞めて認知症の親を介護…生活に行き詰まり「生活保護」を申請するも

――私のことを息子だとわかっていないですから、他人を介護しているような感覚ですよ

 

今でもごくたまに「おお、悟か」などと戻ってくることがあるという父親。「そんなことも、いずれはなくなるんでしょうね」とポツリ。寂しそうに話します。

 

一方で家計は火の車。仕事を辞めたため悟さんは無収入。父親の年金、月6万円で父子二人が暮らしています。もちろん、それで十分かといえば、まったく足りず。まず、悟さん自身が1日3食を食べるのを諦め、それでもダメなら、仕方なく父親も1日2食に……それでもなお、暮らしていくのも精いっぱいという状況が続いていました。

 

――もう無理だ

 

生活保護の申請を行うために役所に行ったこともあるといいますが、「あなたは働けますよね」と申請を却下されたとか。

 

――どう生きていけばいいのか……まったくわかりません

 

と絶望するしかないといいます。

 

親に介護が必要になったとき、親が困窮状態にあれば、親に生活保護を受けてもらう、という手もあります。生活保護の要件として「世帯収入が最低生活費に満たない」「働いて収入を得ることができない」「資産を所有していない」のほか、「生活援助してくれる家族がいない」という要件もあります。付きっきりで親の介護をしているとはいえ、まだやりようはあると判断されたのかもしれません。

 

親と同居しているなら、「世帯分離」という奥の手も。認められたら親だけが生活保護を受けることが可能になります。世帯分離をして生活保護を受ける条件はかなりの厳しさではありますが、親の介護のためには会社を辞めなければならないという場合は、世帯分離が認められることがあるようです。

 

いずれにしても、生活保護に関しては共通の要件はあるものの、最終的には人の判断。同じような状況にあっても、福祉事務所によって判断が分かれることもあるようです。

 

生活保護の申請を却下されたら、再申請したり、審査請求をしたりすることができます。 さらに、審査請求の決定に納得がいかない場合には再審査請求を行うこともできます。

 

何よりも、介護において恐ろしいのは「孤立」。特に親の介護のため子が仕事を辞めた場合、親子は社会から隔絶され、最悪の事態を迎えることも。今後のことに不安になったり、お金に困ったり。何かあったら気負わずに周囲に相談してみることが大切です。

 

田中さんの場合、SNSに状況を投稿したところ、たくさんのアドバイスをもらって、前向きになれたとか。生活保護についても、再度、申請をしてみるつもりだといいます。

 

[参照]

総務省『令和3年社会生活基本調査』

生命保険文化センター『2021年度生命保険に関する全国実態調査』

厚生労働省『生活保護制度』