小中学生の不登校が増加し続けるなか、「フリースクール」が改めて注目されている。かつては不登校の子どもが“やむを得ず通う場所”といったイメージも強かったフリースクールだが、多様性が認められはじめた昨今、新たな居場所として見直されつつあるという。そこで、実際にフリースクールを利用していた子の保護者と、そのフリースクールの運営責任者への取材をとおして、不登校とフリースクールの実態を紹介する。
中学受験を突破。有名進学校に合格した息子だったが…
「息子は今年春から大学生になりました。私たち親もそうですし、息子自身も現役合格は難しいだろうと思っていたのですが、幸いにも合格することができました。大学生活を楽しんでいる息子をみると、とても感慨深い思いがします」
こう話すのは、都内に住む大林愛子さん(仮名、50代)。ひとり息子の大介君(仮名)は中学1年生の終わりから不登校となり、約2年間引きこもり状態に。しかしながら、中学3年生の秋からフリースクールに通い、通信制高校を卒業。今春、都内の難関私立大学に現役合格した。
「引きこもりの間は先行きが見えず、息子本人はもちろん、私たち夫婦も非常に苦しい時期を過ごしました。でも、大学に入った息子から『お母さん、無理強いせずにずっと自分に任せてくれて、見守ってくれて、ありがとう』という感謝の言葉をもらい、本当に救われたんです。あぁ、私たちは間違っていなかったんだって」
大介君は地元の公立小学校から中学受験で私立の男子校に通い始めた。中高一貫の有名進学校だが、本人の希望というよりは、親の意向が強かったという。両親ともに四大卒で、夫は大手上場企業に勤務。当然、息子もいい学校へ通い、いい会社に勤めるのが普通だと思っていた。
「私たちが住む区の地域性もあり、中学受験はなかば“当然”のような空気がありました。そのため小学3年生くらいから某中学受験塾に通いましたが、正直、そこに息子の意思はありませんでした。いま思えば、ただ親の価値観でレールを敷いていただけだったと反省しています」
それでも努力の甲斐あって、見事中学受験を突破。しかし、中学1年生の秋ごろから徐々に異変が現れだしたという。
「おなかが痛い、頭が痛いと言って学校を休みたがるようになったんです。それでも、当時は『学校だけは行きなさい』というようなアプローチをしていました。また息子が家に帰ってからも、勉強しなさい、早く寝なさいと叱っていました。根性論みたいな感じで、追い詰めた部分があると思います」
次第に元気がなくなっていった大介君は、現実から目を背けるように、夜中までゲームをする生活に陥っていく。それも厳しく注意し続けていたある日のこと。
「中1の終わりごろですかね、ある日突然、大介が『もうイヤだ!』と叫んで、動けなくなったんです。そこで初めて、私もことの重大さに気がつきました」
その日から不登校となった大介君は、引きこもり状態に。