小中学生の不登校が増加し続けるなか、「フリースクール」が改めて注目されている。かつては不登校の子どもが“やむを得ず通う場所”といったイメージも強かったフリースクールだが、多様性が認められはじめた昨今、新たな居場所として見直されつつあるという。そこで、実際にフリースクールを利用していた子の保護者と、そのフリースクールの運営責任者への取材をとおして、不登校とフリースクールの実態を紹介する。
増え続ける「不登校」の実態
文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校調査」(2022年度)によると、全国の国公私立小中学校で30日以上欠席した不登校の児童生徒は、10年連続で増加し、29万9,048人と過去最多を更新した。
内訳は小学生が10万5,112人、中学生が19万3,936人となっている。学年が上がるにつれて増加する傾向にあり、最も多いのは中学2年生の7万0,622人で、中学3年生の6万9,544人が続く。
不登校の理由としては、いじめや友だちとの人間関係、先生との関係などさまざまで、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障害)といった発達障害も不登校の背景にあるとみられる。
これらのさまざまな理由で学校に通えない子どもにとって、フリースクールは「新たな居場所」として改めて注目されているようだ。
フリースクールの実際
そんなフリースクールには、大きく分けて2つの種類がある。まずは「居場所」としての役割に重きを置くタイプだ。学校への復帰や勉強ではなく、まずは子どもが安心して過ごせる場所の提供という点を重視している。
そしてもうひとつが、子どもが安心して過ごせる場所を提供しつつ、学習時間をしっかり確保するタイプだ。在籍校への復学や高校進学のため、学習を中心にサポートする。大介君が通った「フリースクールゆうがく」(渋谷区)は後者だ。
ゆうがくの運営母体は、さくら国際高等学校を運営する学校法人上田煌桜学園。同学園は、1974年に理事長の荒井祐二氏が開設した私塾に端を発する。
学校法人上田煌桜学園の田中雄一常務理事は、ゆうがくの理念を次のように説明する。
「ゆうがくは、生徒の心の癒しと学習支援、学びの自信の回復に主軸を置いています。そして、子どもが希望する次のステップに自信をもって踏み出す力を養うことを基本方針としています。在籍校に復帰することはひとつの選択肢と捉え、子どもひとりひとりの思いに寄り添いもっと広い視野で将来を見据えサポートしていきます」
ゆうがくには常時10~30人程度が在籍。平日週5日、10時~14時50分まで、先生と生徒自身で一緒につくった個別カリキュラムに基づき学習する。
ゆうがくの生徒は、約8割が中学卒業までフリースクールで学ぶ。その生徒たちは、通信制高校か東京都立高校のチャレンジスクールに進むケースが大半だという。
ゆうがくの運営母体である上田煌桜学園が運営する「さくら国際高等学校東京校」も通信制高校で、同校に進む生徒も多い。大介君のケースがそうだが、最初から同校への進学を目指してゆうがくに入る生徒も少なくないという。