愛子さんが驚いた息子の変化

「強制ではなく、ちょっと背中を押す感じで通信制高校の学校説明会に誘いました。ちょうど息子もいろいろ考えていたタイミングのようで、素直に参加してくれました」

学校説明会の後、フリースクールにも顔を出したところ、これが吉と出た。2人の生徒と先生も交えて雑談したり、トランプで遊んだりしたことで、大介君のなかにあったフリースクールへの偏見や不信感が薄まったようだった。

「自分の居場所が見つかったということで、息子も少し気持ちが楽になったようでした。それに通信制高校とも連携しているということで、安心感になったというか。それからは週に2~3回、フラッと遊びに行くような感じで通い始めました。友だちもできて、明るく元気になっていく様子が目に見えてわかりました。なにより、息子が外へ出ることで、家のなかで会話が生まれるんです。これが嬉しかったですね」

中学3年生の9月から半年ほど通い、大介君はそのまま連携する通信制高校に入学した。

今回の取材は母親の愛子さんに話をうかがったが、息子の不登校に対して父親である夫はどのようなスタンスだったのだろうか。

「いま思えば、不登校の要因には夫婦関係の問題もあったと思います。夫は子育てにほとんどかかわらず、ほぼワンオペでした。息子のことを相談しても、夫は仕事が自分の役割で、家庭は妻に任せるというタイプです。当初は衝突もありましたが、私も割り切って、夫には仕事に専念してもらうことにしていました」

愛子さんはそのようななかでも、さまざまな出来事や情報は夫へ報告し、また、子どもに言ってほしくないこと、やってほしくないことなどははっきりと伝えた。

「私が伝えたことはきちんと理解してくれて、頭ごなしに息子を刺激するようなことはありませんでした。そこは感謝しています」

実際、通信制高校の相談会には夫婦2人で参加し、学校説明会にも親子3人で臨んだ。

「結果論になりますが、息子が不登校になったことで、私も、おそらく夫も、柔軟な考え方ができるようになったと思います。道なき道を行くような手探り状態でしたから、その時々で道を選んで、ダメならまた考えようという繰り返しでした。何かに対してこうあるべきという硬直的な思考はなくなり、価値観が変わったと思います」

大林さんが「まさか自分の子どもが不登校になるなんて思ってもみませんでした」と述懐するように、不登校は誰にでも起きる可能性がある。