連絡を取る家族もいない、独身だから自分が築いた家庭もない。そんな52歳独身男性がある日難病を宣告されたら? 「おひとりさまこそ、手遅れになる前に早いうちから財産の相続人について考え、対策を講じなければならない」と話すのは露木行政書士事務所の行政書士である露木幸彦氏。本記事では、露木氏が「本来相続人ではない人に財産を譲渡する方法」について解説します。
「なけなしの貯金ですが…」自分が孤独死したあとの遺産は妹ではなく「推し」に託したい…指定難病におかされた52歳派遣社員男性のささやかな望み【行政書士の助言】
「おひとり様」の終活準備
2021年度の生涯未婚率は、男性で23.4%、女性で14.1%まで上昇しました。さらに内閣府の「少子化社会対策白書」では、2040年には男性29.5%、女性18.7%になると予測されています。つまり、20年後、3人に1人は一度も結婚せず、独身のまま、孤独に人生を終えることを意味します。
ところで「おひとりさま」という言葉が世の中に浸透してから約20年。もともとは同居人のいない人を指す言葉で2005年の新語・流行語大賞にノミネートされたことがきっかけで広まりました。当初はフレンチのコース、日帰りのバスツアー、人気のテーマパーク……これらを「ひとり」で行けるかどうかで大変、盛り上がりました。実際のところ、出生動向基本調査(2021年、国立社会保障・人口問題研究所)によると、独身男性は独身の利点の内容として「行動や生き方が自由(71.0%)」、「金銭的に裕福 (10.5%)」、「家族を養う責任がなく、気楽(8.3%)」を挙げていますが、これはあくまで若者の話。
一方、中年のおひとりさまにとって最も関心があるのは「孤独死への不安」という人も多いです。そこで今回、取り上げたいのは孤独の相続。家族の有無でその意味合いは全く変わってきます。どのように「終活」の準備をすれば良いでしょうか?
まず既婚男性の場合、遺産を相続するのは妻子です。家族のため、なるべく多く残してあげたいという気持ちが働きますが、未婚男性の場合は違います。なぜなら、相続する家族が誰もいないからです。そのため、「自分のため」という気持ちしかありません。例えば、国に持っていかれるくらいならパーッと使い切るか、慈善団体にでも寄付するか、いや老後のことが心配だから残しておくか……。
筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして相続の相談を受けていますが、今回の相談者・清野康成さん(52歳。仮名)も自分のことしか考える余裕がなかった一人です。彼は突然、難病に侵され、いつ合併症を併発するか分からず、不安な日々を送っていましたが、何があったのでしょうか?
なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また本人の年齢や家族の構成、未婚の経緯や財産の金額などは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。