小中学生の不登校が増加し続けるなか、「フリースクール」が改めて注目されている。かつては不登校の子どもが“やむを得ず通う場所”といったイメージも強かったフリースクールだが、多様性が認められはじめた昨今、新たな居場所として見直されつつあるという。そこで、実際にフリースクールを利用していた子の保護者と、そのフリースクールの運営責任者への取材をとおして、不登校とフリースクールの実態を紹介する。
息子と話すことがない…親としての苦悩
「まさか自分の子どもが不登校になるなんて思ってもみませんでした。“生きるしかばね”みたいな感じで、外に出られない、ごはんも食べられない、お風呂も入らない。エネルギー切れというか、うつのような状態だったと思います。勉強なんてもちろんできません。普通のことが何もできなくなったのです」
もっぱらネットゲームで現実逃避の、昼夜逆転の生活が続く。
「息子が不登校になってから、自分のこれまでの子育てや接し方が間違っていたのではと後悔したり、自分を責めたりしました。それに、息子はずっと家にいるわけで、そうなると“話すこと”がないんです。息子と同じ空間にいても話題がないから無言が続く……あの時期は本当に苦しかった記憶があります」
しかし、嘆いてばかりはいられない。元の中高一貫校には戻ることは難しい……だからといって、地元の中学に行くのも無理だろうということは、愛子さんにもわかっていた。
愛子さんは悶々と悩みながらも、息子が通える学校の情報収集に奔走する。そのなかで、ある通信制高校を見つけた。不登校の子どもに理解があり、しかも同校には付属のフリースクールがあった。いわゆる“普通の生活”が難しいいま、社会との接点の第一歩として、フリースクールが最適に思えた。その通信制高校へ何度も相談に行き、ここだという確信を強めていった。
フリースクールとは、不登校の子どもに対し、学習や体験活動などの支援を行う民間の施設である。公的機関ではなく、個人・NPO・任意団体などが運営する。規模や活動内容はさまざまで、基本的には子どもの主体性を大切にした教育が行われている。
大介君が中学2年生の年。愛子さんはフリースクールの話をそれとなく振ってみたという。しかし……
「息子はフリースクールに対してネガティブなイメージを持っていて、『そんなワケのわからないところには行きたくない、そんなもの必要ない』と言って聞く耳を持ちませんでした」
せっかく見つけたフリースクールだが、無理強いはできず、膠着状態が1年ほど続いた。
そして大介君が中学3年生の年の夏。これから先、高校のことを考えなければいけない状況下で、タイミングを見計らって話をもちかけたという。