「熟年離婚」の割合が過去最高に

最新の離婚件数が公表されました(厚生労働省の2022年、人口動態統計)。ここでは同居期間が20年を超えるケースを「熟年離婚」とします。その割合が統計をとり始めてから過去最高の23%を超えました。具体的にいうと全体の離婚件数は17.9万組ですが、うち熟年離婚件数は3.8万組。熟年以外の14.1万組と何が違うのでしょうか?

たとえば、25歳女性の平均余命は56年、35歳は46年。先の人生はまだまだ長いです。そのため、「あと何年、生きられるの?」と考える人は少ないでしょう。一方、60歳女性の平均余命は28年、70歳は15年しかありません。(厚生労働省の2022年、簡易生命表)筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっていますが、「離婚せずに死んだらどうしよう」と考える人が一定数、存在します。

しかし、熟年離婚の場合、いざ別れようと思っても、離婚届を提出するまで、かなりの時間がかかります。なぜなら、長年にわたって積もり積もった感情や財産を整理しなければならないからです。

女遊びに金銭トラブル…それでも妻が離婚に応じなかったワケ

今回の相談者・唐津美枝子さん(61歳/仮名)は夫の女、酒、金のトラブルで長年、悩んでおり、10年前に離婚を求められたものの、ずっと拒み続けてきました。しかし、今は「主人と同じお墓に入りたくない!」という理由で離婚を受け入れると言うのです。心変わりの理由は何でしょうか?

なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また家族の構成や年齢、離婚の経緯や財産の金額などは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。

<登場人物(年齢は相談時点。名前は仮)>

夫:唐津憲一(63歳。会社員。年収900万円)

妻:唐津美枝子(61歳。パートタイマー)☆今回の相談者

子:唐津紗理奈(28歳)

美枝子さんが筆者の事務所を訪れたとき、かなり体調が悪そうでした。たとえば、頬がこけるほどやせ細っており、目はうつろな感じで、机につかまらないと椅子に座れないほど。あとで知ったのですが、がんの手術、抗がん剤治療で入院しており、まだ退院して2ヵ月目だったのです。なぜ、まだ体調が回復していないなか、離婚の話を進めようとしているのでしょうか? 「あの世や来世でも主人と一緒なんてまっぴら! できるだけ早く、縁を断ち切りたいんです!」と言います。

夫が出て行く形で別居が始まり、今年で10年目。今まで夫は何度となく離婚を求めてきましたが、美枝子さんはその都度、断り続けて今に至っています。こうして美枝子さん、そして夫は何の進展もないまま、10年も老け込んでしまったのですが、なぜ、美枝子さんは夫のことを無視し続けているのでしょうか? まず筆者は「旦那さんとはどのような結婚生活だったのですか?」と尋ねました。