長年連れ添ったパートナーを亡くした時、残された家族が生活に困らないようにと支給される遺族年金。それだけで生活ができるほどの金額ではないものの、あれば嬉しいサポートです。ただし自営業の人が亡くなった場合は、「えっ、たったそれだけ……」という金額の場合もあるようです。
年金の繰下げ中に「68歳・喫茶店経営の夫」が逝去、67歳妻が店を継ぐも上手くいかず閉店…絶望しかない遺族年金額に「どう、生きていけばいいのか」 (※写真はイメージです/PIXTA)

喫茶店経営40年、会社員時代のわずかな夫が死去…遺族が受け取れる遺族年金額は?

子育てがひと段落してからは、裕子さんも毎日お店にたち、二人三脚で頑張ってきた喫茶店経営ですが、1年前に隆さんが亡くなります。68歳でした。

 

喫茶店は1ヵ月ほどで営業を再開。隆さんの思いをつないでいくつもりでしたが、1年ほどで断念。やはり経営は厳しく、苦汁の決断だったといいます。ここから裕子さんのセカンドライフがスタートします。

 

老後の生活のベースになるのは公的年金ですが、内藤さん夫婦は66~75歳で受給開始時期を決められる「繰下げ受給」を選択していました。65歳で受け取り開始をしていたら、隆さん、厚生年金が月1.8万円、併給の国民年金と合わせても月8万円程度。裕子さんは国民年金だけで月6万円程度。少しでも月々にもらえる年金額が増えればと、受給開始のタイミングを遅らせていたのです。年金の繰下げ受給では、受取り開始を1ヵ月遅らせるごとに0.7%増額。最高84%増額となります。ただし、遺族年金の受給権が発生した時点で増額はストップします。つまり、隆さんが亡くなった時点で裕子さんの年金の増額は停止したことになります。

 

喫茶店を閉めて落ち着いたところで、年金の申請のために年金事務所にやってきたという裕子さん。そこで、ある程度予想はしていましたが、少ない年金額に思わず声をなくしてしまったといいます。

 

そもそも隆さんは繰下げ受給中に亡くなったので、「未支給年金」分が遺族に支給されます。また裕子さんの年金は、繰下げ受給の増額が66歳8ヵ月の時点で停止。増額率は14.0%で、月7.7万円ほどになるとか。さらに隆さんは老齢厚生年金の受給権者だったため、裕子さんは遺族厚生年金を受け取ることもできますが、遺族年金は増額される前の金額を基準として計算。老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額となり、裕子さんの場合は月1.3万円ほど。自営業の人が亡くなった場合、遺族年金はゼロということも珍しくありません。裕子さんのように、亡くなった人に会社員時代があってもその期間が短いと、遺族厚生年金は「たったこれだけ……」と肩を落とすような額にしかならないことも。

 

遺族年金と、わずかに増額された自身の老齢年金、あわせて月9万円。貯蓄はほとんど残っておらず、「どう生きていけばいいのか……」と、思わず絶望してしまう金額です。幸い、閉店した喫茶店は自宅の1階。「ここを売れば、少しは安心かな」と裕子さん。ただ「こんな寂れた商店街の店(家)、売れるかね……」とポツリ。裕子さんの老後、まだまだ不透明な状況です。

 

[参照]

全国商工会連合会『小規模企業景気動向調査』

中小企業庁『令和3年度商店街実態調査』

日本年金機構『遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)』