NPO法人ふるさと回帰支援センターによると、地方圏への移住希望者は年々増加傾向にあるといいます。しかし、首都圏から地方への移住を検討する際に大きな壁となるのが「収入」です。首都圏と地方では、支出や収入にどれほどの差があるのか……地方移住のメリット・デメリットについて、お金の側面からみていきましょう。FP Office株式会社の久保雅巳FPが解説します。
世帯年収1,100万円の都内在住30代共働き夫婦、わが子のために〈地方移住〉を検討も…「可処分所得を減らしたくない」妻の願いを叶えるための給与額【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

都内で暮らすA夫妻の収支状況

〈A夫妻の可処分所得〉

 

・夫Aさん…手取り約46.8万円(年間約562万円)

・妻Bさん…手取り約23万円(年間約276万円)

→世帯で約69.8万円(年間約838万円)

 

A夫妻は現在、東京都内の賃貸マンション(家賃19.2万円)に居住中です。

 

教育費2.5万円の内訳は、保育費用約10,000円、スイミング5,000円、英語10,000円で、習い事などは今後も増やしていきたいとのこと。また、将来の大学費用のために月15,000円を積み立てています。

 

外食・娯楽費は月21万円で、家賃を含む月の支出は約60.7万円となることが分かりました。その他、年間約100万円程度貯金ができています。

 

[図表3]A夫婦の支出

 

地方に移住した場合、居住費は月額9万円程度となり、月額10万円下がります。

 

水道・光熱費、交通費・通信費は大きくは変わらないと予想されるため、固定費はこの月額10万円分(年間120万円)が下がることになるでしょう。

 

今の生活水準を落としたくないというBさんの意向を反映させると、その他の支出における変動はないと考えます。

 

上記をふまえると、可処分所得で年間735万円が必要となることがわかりました。

 

Aさんのみの収入であれば年収1,015万円、夫婦共働きであればAさんが750万円、Bさんが230万円がそれぞれ必要になります。

 

A夫妻に朗報!?…20代・30代は移住時に「増収」となることも多い

近年、テレワークによる在宅勤務の推奨など、働く場所に縛られない選択肢が増加しています。

 

実際、兼業・副業の許容、転勤制度の廃止、テレワークに適応する人事制度の導入などを実施する企業の増加など、働き方の多様化が暮らし方の多様化にもつながっているようです。

 

その結果、パーソル総合研究所の調査報告書によると、移住者の53.4%が転職はしておらず、60%弱が移住に伴う収入変化はなかったと回答しています。

 

一方で40%は移住後の収入変化がありました。20代・30代では、移住時に「増収」となる割合が多く、40代を分岐点として50代以降は「減収」となる割合が増加していることが分かります。

 

※
[図表4]移住した際の年収増減(年代別)出所:パーソル総合研究所シンクタンク本部:就業者の地方移住に関する調査報告書