NPO法人ふるさと回帰支援センターによると、地方圏への移住希望者は年々増加傾向にあるといいます。しかし、首都圏から地方への移住を検討する際に大きな壁となるのが「収入」です。首都圏と地方では、支出や収入にどれほどの差があるのか……地方移住のメリット・デメリットについて、お金の側面からみていきましょう。FP Office株式会社の久保雅巳FPが解説します。
世帯年収1,100万円の都内在住30代共働き夫婦、わが子のために〈地方移住〉を検討も…「可処分所得を減らしたくない」妻の願いを叶えるための給与額【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

地方移転による家計への影響は?【収入編】

厚生労働省の「2022(令和4)年賃金構造基本統計調査」によると、東京都の平均年収は全国で最も高く375.5千円となっています。

 

全国の平均賃金は月額31万1,800円(年収374万円)で、それよりも賃金が高かったのは5都府県(東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県)のみとなっており、地方との格差が拡大していることがわかります。

 

出所:
[図表5]都道府県別賃金 出所:厚生労働省「2022(令和4)年賃金構造基本統計調査」

地方移転を検討する家族に

今回の相談は、移住によって生活水準を変えたくないとのことでした。娯楽・外食・教育にお金をかけているA夫妻にとって、移住先は今までとまったく同じ水準での生活とはいかないかもしれません。

 

地方で暮らすと住宅にかかるコストを抑えられるというメリットがありますが、そのほかの支出で意外にお金がかかることもあります。

 

たとえばマイカーの維持費です。車は地方では足代わりとなる必需品。その車の維持費(自動車税、自賠責保険、任意保険、ガソリン代、車検代)はなかなか大きな出費といえるでしょう。

 

また、車の買い替え費用など、数年に一度の大きな支出も想定しておく必要があります。

 

教育に関していうと、東京には多くの学校、学習塾、習い事などがあり、さまざまな選択肢のなかから選ぶことが可能です。教育費さえかけることができれば、子どもにさまざまな選択肢を与えられます。

 

一方、地方にはAさんが望むような「自然豊かなのびのびとした環境」があります。このような環境では教育費も相対的に抑えられる可能性が高いです。

 

しかし、大学進学のタイミングでひとり暮らしとなる可能性が高くなり、大学進学時の費用はかさむでしょう。

子どもも交えて「家族全員が満足する生活スタイル」を考える

東京か地方かで生活スタイルや子供の教育環境が変わってきます。

 

自分たち家族が望んでいる生活スタイルは何か? それが実現できるのはどこなのか? というように、今だけではなく未来も想像したうえで移住を計画しましょう。

 

その上で、ライフプランを立て子どもの教育費や老後の資金をどのように準備していくかを考えることが重要です。

 

便利さや自然の豊かさなど分かりやすい特徴にだけ注目するのではなく、お金の事情を比較してみることによって、新たな気づきを得られるはずです。

 

地方移住のための情報をまとめたWebサイトや自治体ごとの移住相談イベントなどを活用し、情報収集をしてみるとよいでしょう。

 

また、ファイナンシャルプランナーなど専門家に相談し、未来のことも考えたベストな選択をすることをおすすめします。

 

 

久保 雅巳

FP Office株式会社

ファイナンシャルプランナー