父の書斎から見つかったノート…ひとり娘の名前のあとに記されていた内容
久美子さんは口コミで評価の高い業者に連絡。料金は40万円ほどと、「高いなぁ」と思いつつ、丁寧な作業が評判だったのでトラブルになるよりまし、と考え、最終的に依頼したそうです。
作業は2日。立会いは作業の最初と最後だけ。その間、何か必要があれば連絡をくれるというものでした。滞ることなく作業は終了。料金は後ほど、銀行振込でOKとのことだったので、サインだけして終わりかと思ったら、最後にひとりの作業員から「これは捨ててはいけないと思って」と、1冊のノートを渡されたといいます。和夫さんの書斎で見つけたというもので、どこにでも売っているような普通のノート。表紙は破れてボロボロです。
表紙をめくると、文字がびっしり。日記、というわけではなく、そのときに思ったことを書き綴ったようなものでした。その最後に書かれていたのは遺言書のような内容。そして最後は「久美子、」と読点で終わっていました。
――このあと、何を書くつもりだったのだろう
どんなに考えても答えは出てきません。しかし考えを巡らせているうちに、ずっと折り合いが悪く、ほとんど顔を合わせなかったことに対して、急に後悔の念が押し寄せてきたといいます。「なんで、もっと話をしてこなかったんだろう……」と涙が止まらなくなったといいます。
遺言書は、遺言をする人(遺言者)が自分の手で書いて作成する「自筆証書遺言」、遺言の内容を記載した文書(自筆でなくてもよい)に遺言者が署名押印してこれを封筒に入れ、文書に用いた印で封印し、これを公証人1人及び証人2人以上の前に提出して作成する「秘密証書遺言」、遺言者が2人以上の証人の立会いのもとで遺言の趣旨を公証人に述べ、公証人がこれを筆記し、その内容を読み聞かせ、筆記の正確性を承認した全員が署名押印して作成する「公正証書遺言」の3つがあります。
今回、ノートに記されたものは、たとえ遺産分割などのことが触れられていたとしても、効力を発揮するものではありません。ただ折り合いの悪かった久美子さんに思いを伝えるには、十分なものだったのかもしれません。
[参照]