近い関係だからこそ、難しい親子関係。なかなか折り合いがつかず、必要最低限の話しかしない、さらにはほとんど絶縁状態というケースも。そんな親子関係が「親の死去」で終わりを迎えたとき、どうなるのでしょうか。
49歳ひとり娘「15年疎遠だった78歳父の遺品整理」を業者に丸投げ…書斎から出てきた「ボロボロのノート」その中身に号泣 (※写真はイメージです/PIXTA)

父の書斎から見つかったノート…ひとり娘の名前のあとに記されていた内容

久美子さんは口コミで評価の高い業者に連絡。料金は40万円ほどと、「高いなぁ」と思いつつ、丁寧な作業が評判だったのでトラブルになるよりまし、と考え、最終的に依頼したそうです。

 

作業は2日。立会いは作業の最初と最後だけ。その間、何か必要があれば連絡をくれるというものでした。滞ることなく作業は終了。料金は後ほど、銀行振込でOKとのことだったので、サインだけして終わりかと思ったら、最後にひとりの作業員から「これは捨ててはいけないと思って」と、1冊のノートを渡されたといいます。和夫さんの書斎で見つけたというもので、どこにでも売っているような普通のノート。表紙は破れてボロボロです。

 

表紙をめくると、文字がびっしり。日記、というわけではなく、そのときに思ったことを書き綴ったようなものでした。その最後に書かれていたのは遺言書のような内容。そして最後は「久美子、」と読点で終わっていました。

 

――このあと、何を書くつもりだったのだろう

 

どんなに考えても答えは出てきません。しかし考えを巡らせているうちに、ずっと折り合いが悪く、ほとんど顔を合わせなかったことに対して、急に後悔の念が押し寄せてきたといいます。「なんで、もっと話をしてこなかったんだろう……」と涙が止まらなくなったといいます。

 

遺言書は、遺言をする人(遺言者)が自分の手で書いて作成する「自筆証書遺言」、遺言の内容を記載した文書(自筆でなくてもよい)に遺言者が署名押印してこれを封筒に入れ、文書に用いた印で封印し、これを公証人1人及び証人2人以上の前に提出して作成する「秘密証書遺言」、遺言者が2人以上の証人の立会いのもとで遺言の趣旨を公証人に述べ、公証人がこれを筆記し、その内容を読み聞かせ、筆記の正確性を承認した全員が署名押印して作成する「公正証書遺言」の3つがあります。

 

今回、ノートに記されたものは、たとえ遺産分割などのことが触れられていたとしても、効力を発揮するものではありません。ただ折り合いの悪かった久美子さんに思いを伝えるには、十分なものだったのかもしれません。

 

[参照]

PGF生命『「おとなの親子」の生活調査2023』

総務省『遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書』

法テラス『遺言書には、どのような種類がありますか。』