自分の失敗やミスによって謝罪をしなければならないとき、「大事にしたくない」という気持ちからそれとなく済ませてしまう人が増えているようです。フリーランスでキャスターや社外役員などを行う木場弘子氏は、謝罪は「コミュニケーションの能力を最大限に発揮できる、得難いチャンス」であるといいます。木場氏の著書『次につながる対話力~「伝える」のプロがフリーランスで30年間やってきたこと~』(SDP)より、詳しくみていきましょう。
つい使いがちだが…謝罪の場面で避けるべき「相手をモヤモヤさせる」表現とは【対話のプロが助言】 (※画像はイメージです/PIXTA)

「すみません」の代わりに「ありがとう」?

謝罪というのは、このようにコミュニケーションの力が最も問われる場面であり、ここで「正しい対処」ができれば、ピンチから、それ以上の信頼関係も築けます。自分のミスや失敗について、潔く非を認め、気持ち良く謝れる人には、誰しも爽やかさを感じるでしょう。事態が起こった理由(言い訳ではなく)を簡潔に説明したうえで、真剣に頭を下げて「申し訳ありません」と言う姿は、ささくれ立った気持ちを一瞬で和ませてくれるものです。

 

しかしながら、最近とても気になることがあります。

 

失敗をして当然謝る場面でも素直に謝らず、「ありがとう」とお礼を言う人が多くなっているという点です。若い人ばかりではなく、年配の方にも増えているようで、不思議な感じがしてなりません。私も、時にスタッフや仕事先の方のミスに気づいて、優しく、それとなく指摘する場面がありますが、それに対して「ご指摘、ありがとうございます」と返ってくるケースが、確かに増えている気がいたします。

 

この場合、「ありがとう」なのですから、悪い気はしませんが、でも、何だかすっきりしません。腑に落ちないのです。ここはやはり「ありがとう」の前に、まずきちんと「すみません」ではないかしら、とモヤモヤしてしまいます。

 

こうした対応がどこからくるのか考えると、小さなプライドだったりするのか、あるいはトラブルの印象をできるだけ小さく見せたいという妙な心遣いなのか。当の本人にも気づかない理由があるのかもしれませんが、この妙な違和感については、「おかしい」と注意することもはばかられ、私も困っているところです。

 

失敗やミスで謝罪をする場面は、対話やコミュニケーションの能力を最大限に発揮できる、得難いチャンスであり(なかなかそう捉えられませんが)、これをうやむやにごまかしていてはステップアップできません。皆さんは、「ありがとう」の前に「すみません」と、ほんの少しの勇気を出して言ってみて下さい。そうすることで、きっと、自分自身もスッキリするはずです。

 

 

木場弘子

フリーキャスター