年金は希望によって60~75歳の間で受け取るタイミングを決めることができます。ただ60~64歳で年金の受取りを開始すると、タイミングが早ければ早いほど、年金は減額。それでも年金の繰上げ受給を選択する人たちの切実な理由とは?
65歳で「年金16万円」だったが…「退職金1,500万円」60歳の元サラリーマンが受け取る「年金額」に唖然も、うれし涙のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

退職金1,500万円…60歳定年サラリーマンが「年金の繰上げ受給」を選んだ切実理由

申請時に決定した減額率が一生続く年金の繰上げ受給。ほかにも国民年金の任意加入ができなくなる、老齢基礎年金と老齢厚生年金は一緒に繰上げとなる(繰下げ受給は、どちらか一方だけ繰下げすことが可能)、障害基礎年金を受け取れなくなる、寡婦年金がもらえないなどのデメリットがあります。

 

それにも関わらず、20万人ほどの人が「年金の繰上げ受給」を選択しています。60歳定年と同時に年金を受け取り始めた男性もそんなひとり。「年金の繰上げ受給」に救われたと感謝を口にします。

 

60歳定年時点、男性は65歳から併給の老齢基礎年金含め16.4万円の年金がもらえるはずでした。定年以降も、希望すれば65歳までの雇用延長(ただし正社員ではなくなる)もあり、さらに老齢厚生年金の受給額を増やすことも。しかし、男性は60歳定年と同時に現役を引退。年金の繰上げ受給を希望します。結果、年金は24%の減額となり、年金受給額は月12.5万円……改めて計算してみると、「たったこれだけ?」と唖然としてしまう金額です。

 

それでも、なぜ男性は年金の繰上げ受給を選んだのでしょうか。

 

――もう働けない……

 

「坐骨神経症」に長年、苦しめられてきたという男性。座っていても、立っていても腰に痛みが走り、痛みがヒドイときはとても寝られない……定年までは何とか勤め上げたものの、それ以上は気力も体力も限界でした。

 

定年時点で貯蓄はほとんどなく、退職金は1,500万円ほど。それを取り崩しながら65歳の年金受給を待てば、退職金は1,500万円→650万円ほどになる計算でした。

 

――万が一に備えるなら、退職金は少しでも残しておきたい

 

そこで繰上げ受給を選んだといいます。

 

――月12万円では正直足りないけれど……ほとんど退職金を使わずに暮らしていくことができる

――万が一のための1,500万円があると思うと、気持ちがラク、安心

――年金の繰上げ受給があって、本当に良かった

 

60歳で年金を受け取れることに、感謝しても感謝しきれないと、うれし涙を浮かべるほど。

 

繰上げ受給をするメリットは、定年後など、不安定な生活を安定させられること。収入が確保でき、それで安心して暮らしていけるなら、たとえ受給額が減額となったとしても大きなメリットといえるでしょう。ただ一度繰上げ受給を選択すると、請求を取り消すことはできません。十分に検討したうえで判断することが重要です。

 

[参照]

厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』

日本年金機構『年金の繰上げ受給』