人は誰もが年をとるものですが、親が老いていくことを受け入れることができない、というケースは多いもの。また子どもたちに迷惑はかけられない、老いていく姿は見せたくない、という親も。そんな両者にとって、ベストな選択肢とは……。
絶対に来るなと言っただろ!「年金20万円」「150坪の邸宅」で1人暮らしの〈79歳・昔気質の父〉、娘と孫の訪問を断固拒否する「悲しい理由」 (※写真はイメージです/PIXTA)

10年で1.5倍に!65歳以上のおひとり様増加中

厚生労働省『令和5年国民生活基本調査』によると、2023年、1人暮らし世帯は1,849.5万世帯。そのうち、65歳以上のおひとり様世帯は855.3万世帯。男性が304.2万世帯、女性が551.1万世帯でした。年によって増減はあるものの、高齢者のおひとり様世帯は増加傾向にあります。

 

10年前の2013年、高齢者のおひとり様世帯は573万世帯。20年前の2003年は341万世帯、30年前は199.0万世帯でした。この10年で1.5倍、20年で2.5倍、30年で4.3倍にもなりました。

 

おひとり様の高齢者が多くなったのは、未婚率の上昇、離婚率の上昇、配偶者との死別後でも子どもと同居しないケースが増えていることなどが挙げられます。

 

【高齢者のおひとり様の推移】

1993年:199.0万世帯/39.1万世帯/159.9万世帯

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2003年:341.1万世帯/77.6万世帯/263.5万世帯

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2013年:573.0万世帯/165.9万世帯/407.1万世帯

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2018年:683.0万世帯/222.6万世帯/460.4万世帯

2019年:736.9万世帯/257.7万世帯/479.3万世帯

2021年:742.7万世帯/265.1万世帯/477.6万世帯

2022年:873.0万世帯/313.8万世帯/559.2万世帯

2023年:855.3万世帯/304.2万世帯/551.1万世帯

※数値は左より、男女合計/男性単独/女性単独

 

広い邸宅にひとり暮らしの父…

母が亡くなり、79歳の父が自宅(実家)でひとり暮らしを続けているという48歳の女性。実家には車で1時間ほどではあるものの、家事をしているイメージのない父がひとりで暮らしていけるものか……女性にとって不安しかなく、週1回、実家に通っているといいます。

 

女性の心配をよそに、意外と家事をしっかりとこなしている父親。「心配などしなくてもよい」「頻繁に来られては迷惑だ」と昔気質の父親は、わざと女性を遠ざけるようなことを言うことも。ただ女性は1枚上手で、必ず小学生の娘(孫)を連れていくようにしていたとか。

 

――娘(孫)にはデレデレなんで、父は

 

孫は目に入れても痛くないのか、会うたびにこづかいをくれる父親。その金額がいつも予想を超えているので、「いいよ、そんなに」と言っても聞かず。

 

――月に20万円ほど年金をもらっているけど、使い道もないから

 

なんとも羨ましいことをいう父親。一方で、「それなら、この家を直せばいいのに……」と、心底思うと女性。曽祖父母の代からの家は広さ150坪超。邸宅といえるような規模で、しかも無駄に広い庭も。これらを維持するだけでも大変です。さらに階段は驚くほど急で、段差も多く、高齢者がひとり暮らしするには難ありと言わざるを得ません。

 

「家をリフォームするか、私たちと一緒に住まない?」と提案しても「いつまで生きられるか分からないのに、リフォームなんてもったいないことできるか」「気を遣いながら暮らすのはごめんだ」とすべてNG。「こうなったら、テコでも動かない」と、これ以上言うことはなかったといいます。

 

そんなある日、父が自宅で転倒し骨折、そして入院。退院はできたものの、以前のようにスムーズに移動することは難しく、できれば人の手を借りたほうが……という状態になったとか。

 

厚生労働省『令和4年国民生活基本調査』によると、介護が必要となった主な原因の第1位は「認知症」で16.6%。続いて「脳卒中」が16.1%、「骨折・転倒」が13.9%と続きます。高齢者が骨折すると、完全に元通りになるとは限りません。骨折を機に杖やシルバーカーを使うようになるのは、よくあるパターンです。

 

父親の場合、「人の手を借りなくても生きていける」と、入院前とスタンスは変わらなかったとか。しかし、さらに父親に変化があったのは、退院からしばらく経ってから。