独身時代は自由に趣味を楽しんでいたけれど、結婚し、子どもが生まれるとそういうわけにはいきません。ぐっと我慢し、定年を迎えたら思う存分……そう夢みているサラリーマンも多いのでは? しかし、夢みた老後が誰もが実現できるとは限らないようです。
「年金も半分はいただくわ」と妻は…退職金3,000万円を手に意気揚々の定年サラリーマン、結婚35年目の離婚危機に〈穏やかな老後〉が崩壊 (※写真はイメージです/PIXTA)

定年した夫に「離婚」を突き付けた妻…積年の想い

何が不満だったのか、離婚という結論に至ったのはなぜか。色々と考えてみましたが、答えが見つからなかったといいます。そこで「何が不満なんだ?」と尋ねたところ、

 

――わたし、お義母さんと同じお墓には入りたくないの

 

と、まさかの理由。男性の母は、3年前にすでに他界。確かに嫁姑の関係はよくありませんでしたが、もう懸念はないはず。「もう母さんもいないんだし、なんで?」と尋ねると、

 

――お義母さんからヒドくいびられている時もあなたは知らんぷり。そんなあなたに、ずっと前に愛想を尽いていたの

――定年するまでは、定年するまでは……ずっと我慢してきたの

 

まさか、そんなに不満を募らせていたとは……男性にとってはまさに晴天の霹靂。「結婚して35年、一緒に頑張ってきたじゃないか」などと、なんとか妻をなだめようとしますが、意志はかなり固いよう。

 

――年金もちゃんと半分はいただくわ

 

あとは男性が書くだけという離婚届とそんな捨て台詞を吐いて、家を出ていったといいます。

 

財産分与は、婚姻中に双方の協力によって取得した財産は名義にかかわらず精算の対象。子どもの名義の預金や保険であっても、夫婦の財産から出したものであれば、財産分与の対象となります。退職金も同様。さらに退職金も在職中の労働に対する賃金の後払いとしての性質を有するので、たとえば、これから退職金を受け取る予定であっても財産分与の対象となります。

 

一方、婚姻中でも親から相続した財産は、基本的に財産分与の対象にはなりません。ただ相続財産の維持に、一方の寄与や貢献があった場合は、財産分与の対象となる場合があります。

 

年金に関しては、要件をクリアすれば厚生年金の年金分割請求が行えます。年金分割には、共働きの夫婦が婚姻期間中の厚生年金記録に基づいて、夫婦の話し合いにより分割割合を決定する「合意分割」と、国民年金の第3号被保険者(年収130万円未満の主婦など厚生年金加入者に扶養されている配偶者のこと)だった配偶者と、厚生年金記録を2分の1ずつ分割する「3号分割」があります。夫婦共働きだった場合、夫婦間で収入が少ない/ないほうが、多いほうに年金分割を請求できます。

 

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、2022年度、年金分割件数は3万2,927件。分割した人は平均して3.1万円ほど年金が減少しています。平均値通りだとすると、男性の年金は月20万→月17万円ほどになるということになります。

 

後日談。

 

35年の月日を重ねてきても、離婚という結論に達しそうな男性。弁護士を介しての交渉を行っているといいます。

 

[参照]

株式会社はぐくみプラス『夫婦関係の悩みについてのアンケート調査』

法テラス『財産分与の際には、どのような財産が対象となるのですか。』

法テラス『将来受け取る予定の退職金(退職手当)は、財産分与の対象になりますか。』

法テラス『親から相続した財産は、財産分与の対象になりますか。』

日本年金機構『離婚時の年金分割』

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』