親の介護の重い負担…7万人が「もう無理!」と離職
――手を合わせては、謝ってばかりです
49歳の女性。謝る相手は78歳で逝去した母親。仏前に手を合わせるたびに、後悔の念が押し寄せるといいます。
母親は75歳のときに脳卒中で倒れ、一命は取りとめたものの麻痺が残る状態に。実家でひとり暮らしの母。体が不自由ななか生活するのは大変ですし、女性も気が気でありません。
それから始まったのは介護と仕事を両立する日々。朝、「家事を済ませてから出勤」→「実家へ」→「夜、帰宅」というのがお決まりのパターンになりました。しかし「このままではお母さんが倒れてしまう」と心配した夫と子どもたちは、「家のことは大丈夫だから、お祖母ちゃんのところいって」と介護に協力してくれることに。以来、基本的に実家に寝泊まりし、ときたま自宅に帰るという生活を続けていたといいます。
厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』で「要介護者等」と「主な介護者」の関係をみていくと、最も多いのは「同居の配偶者」で22.9%。続いて「同居の子」で16.2%。「事業者」15.7%の次に「別居の家族等」が11.8%と続きます。
ただ最多の「配偶者」は、平均年齢や夫婦の年齢差を考えると、「介護を必要とする夫」を「介護する妻」というパターンが多く、ひとり身となった妻を介護するのは同居、別居問わず、「子」というパターンが多いと考えられます。
そして麻痺の残る母親は、要介護4。要介護度別にみた「同居の主な介護者」の介護時間をみていくと、要介護4の場合、「ほとんど終日」が41.2%、「半日程度」が20.0%、「2~3時間程度」が9.4%。「必要なときに手をかす程度」が、要介護1では55.3%だったのが、要介護2では45.0%、要介護3では26.0%、要介護4では17.4%と2割を切ります。要介護4の介護負担がどれほど重いものか、この結果からも一目瞭然です。
また仕事と介護の両立は、介護を経験したことがない人でもイメージできるように大変なもの。2022年、個人的理由で離職した人のうち「介護・看護」を理由とする人は約7.3万人。そのうち女性は約4.7万人で、男性よりも女性のほうが家族の介護に従事しなければならない現状も垣間見ることができます。