年金が頼りとなる老後。限られた収入のなかで生活苦に陥る高齢者が多いなか、「年金の受取額を増やしたい」という人も多いでしょう。そこで「年金の繰下げ受給」を選択するケースが多いですが、ルールを知らず、年金受給の段階で「思ったよりも年金が少ないぞ」と想定外の事態に見舞われることも。
〈年金の繰下げ〉なんて意味なかったな…70歳・受給開始で「月26万円」のはずが、年金事務所で知る「年金減額」の仰天事実 (※写真はイメージです/PIXTA)

65歳以降も働いて給料がもらえるなら…「年金の繰下げ受給」もひとつの選択肢

厚生労働省『令和5年国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯の生活意識は「大変苦しい」が26.4%、「やや苦しい」が32.6%、「普通」が36.7%。悠々自適な老後とはほど遠く、「はぁ、しんどい」という日々を送っている高齢者が6割弱にのぼっています。そんな高齢者の状況を傍から見ていたら、老後を迎えるのが不安になります。そこで「できるだけ長く働いて給与をもらって暮らそう」と多くの人が考えるのではないでしょうか。

 

現在、70歳までの雇用確保が企業の努力義務となっています。60歳が定年、でも年金受給が始まる65歳まで働く、というのが多いパターンではありますが、将来的に70歳まで働くというのが一般的になるかもしれませんし、実際にそのような選択をする高齢者は増加の一途を辿っています。

 

総務省『労働力調査』によると、「65~69歳」の就業率は「2002年」35.5%→「2012年」38.2%→「2022年」52.0%と、この10年で大きく延びました。ちなみに「70~74歳」の就業率は「2002年」22.2%、「2012年」23.4%、「2022年」33.9%、「75歳以上」の就業率は「2002年」9.0%、「2012年」8.4%、「2022年」11.0%。やはり60代後半の就業率の伸びは大きく、今後、70歳が「仕事を辞めるか、続けるか」のターニングポイントになりそうです。

 

年金の受給開始は、現行では原則65歳。もし65歳以降も働き続けるのであれば、「年金を受け取りながら働くか」「年金の繰下げ受給を活用するか」の二択になるでしょう。

 

年金の繰下げ受給は、年金の受給開始を66~75歳の間で繰下げるというもので、1ヵ月繰下げるごとに65歳で受け取るはずだった年金額に0.7%加算されます。1年間で8.4%、3年間で25.6%、5年間で42.0%、最大10年間で84.0%に増額されるわけです。