歳を重ねていくについれて高まる介護リスク。自宅での生活に不安を覚えたときのひとつの選択肢が老人ホームです。いつもスタッフがいてくれて、安心、安全……しかし、そうもいっていられない事態に陥っているケースも増えているといいます。
痛い!やめて!「老人ホーム入居の83歳母」の悲鳴…駆けつけた50歳娘が目撃した衝撃の光景【増加する高齢者虐待の実態】 (※写真はイメージです/PIXTA)

人手不足が深刻化する老人ホーム…スタッフの疲弊の先にある壮絶

女性がホームで覚えた違和感。以前よりもスタッフの数が圧倒的に少なく感じました。噂話レベルではあるものの、2ヵ月前、施設長とベテランスタッフがトラブルとなり、スタッフが退職。それが引き金になったのか、次々とスタッフが辞めてしまったといいます。

 

トイレに間に合わず、粗相をしてしまったのも、もしかしたらスタッフが足りないからかもしれません。人手不足により業務過多となり、それによりスタッフのストレスが増大。それが入居者に向いてしまっているかもしれません。

 

公益財団法人介護労働安定センターが行った調査によると、介護事業所で人手不足を感じている事業所は64.7%。12.1%は「大いに不足」と回答し、深刻な状況下にあります。また施設別にみていくと、たとえば介護老人福祉施設(特養)。介護職員の不足を感じているケースが71.1%、「大いに不足」は26.5%でした。

 

慢性的な人手不足は、女性が感じたような虐待を引き起こす要因にもなります。厚生労働省の調査によると、2022年度、介護サービス業務従事者による虐待は「相談・通報」が2,795件で、前年から405件増、「虐待判断」は856件で前年から117件の増加と、いずれも過去最多でした。

 

これは老人ホームをはじめとする、施設に問題にだけにとどまりません。高齢者の世話をしている家族らによる虐待について、「相談・通報」は3万8,291件で、同比1,913件の増加、「虐待判断」は1万6,669件で、同比243件。「相談・通報」は過去最多で10年連続の増加。虐待判断は横ばい傾向にあるといいます。

 

また介護従事者による虐待の発生要因として、「教育・知識・介護技術等に関する問題」は56.1%、「職員のストレスや感情コントロールの問題」は23.0%、「虐待を助長する組織風土や職員間の関係の悪さ、管理体制等」が22.5%、また施設の種別でみていくと、「特養」が32.0%、「有料老人ホーム」が25.8%、「認知症対応型共同生活介護」が11.9%でした。

 

今後、さらなる高齢化により、介護ニーズは高まることは確実。一方で人手不足は深刻化の一途を辿り、虐待へと繋がりやすい状況がさらに進むばかりです。安心の老後のためにも、なんらかの解決が望まれます。

 

[参照]

公益財団法人介護労働安定センター『令和5年度 介護労働実態調査』

厚生労働省『令和4年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」 に基づく対応状況等に関する調査』