高齢化によりさまざまな問題が深刻化していますが、そのひとつが「孤独死」。主に一人暮らしの人が誰にも看取られることなく、その人の住居などで突発的な疾病などによって死亡することを指し、特に高齢者に多いとされています。さらに孤立を深めるおひとり様の高齢者は多く、発見が遅れることも珍しくありません。そんな孤独死の現場には、ヒドイ惨状が広がっていることも……。
悔やんでいます…疎遠になっていた〈年金14万円・80歳の父〉が逝去。20年ぶりに訪れた実家で遭遇した「まさかの惨状」に衝撃 (※写真はイメージです/PIXTA)

20年ぶりの「実家」は驚きの変わりよう

弟と話し合い、最後の親孝行として葬儀を行うことにしたという男性。参列したのは親戚10名程度というものでしたが「やらなかったら後悔したと思うので、やってよかった」といいます。

 

ただ今後のことを考えると「少々面倒だな」とポツリ。問題は父親の相続まわりのことでした。長らく顔を合わせていない父親。相続人となるのは男性と弟の2人だろうと考えられましたが、父親がどんな生活をしていたのか、どれほど遺産があるのか、まったく想像できません。また本当に相続人は2人だけなのか、調べる必要もありました。

 

とりあえず弟と状況把握のために、父親が住んでいた実家を片付けにいこうということになったという男性。早速、週末に訪れた2人。そこにあったのは変わり果てた実家でした。

 

――私の記憶にある実家は、母がいつも綺麗に掃除をしてくれていた家だったので……衝撃でした

 

外壁や屋根はボロボロ。手入れされていた庭は、背丈ほどの雑草が生い茂っています。さらに家の中に入るとゴミの山で悪臭も。口呼吸でないととてもその場にはいられません。まさにそれは「ごみ屋敷」と呼べる惨状。

 

環境省が全国1,741市区町村に行った『令和4年度「ごみ屋敷」に関する調査報告書』によると、直近5年間でごみ屋敷事案の認知している自治体は661で4割弱。ごみ屋敷事案の認知方法は「市民からの通報」が88.7%であり、あくまでも見るからに「ごみ屋敷」となっているものの棟数。「扉を開けたら、ごみでいっぱい」というものは含まれません。

 

――こんな家を相続といっても……売れもしないのでは

 

総務省『令和5年住宅・土地統計調査』によると、日本全国にある住宅は6,502万0,700戸。そのうち「空き家」は899万5,200戸で、空き家率は13.8%。今後、高齢化と共に相続の数は増えていき、男性のような「相続といっても困る」というような住まいは増えていくだろうといわれています。

 

空き家のままだと腐敗や損壊が進み、地域の防災面や治安にマイナスの影響を与える可能性があります。そこで空き家を放置すると罰金を科す法律が施行され、空き家増を食い止めようという動きも。

 

男性の場合、何をするにしてもまずは片付けないことには先に進めないと、遺品整理も兼ねて業者に依頼することに。その額、50万円……かなり痛い出費でしたが、整理した結果出てきたのが、父の貯金通帳。父がもらっていた年金は月14万円ほどで、貯蓄は数十万円のみ。

 

――余裕があるとはいえないなか、ひとり質素な暮らしをしていたんだろうな

 

そんな父親がどんな最期を迎えたのか……男性はさらに後悔の念が深まったといいます。

 

[参照]

東京都保健医療局『東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計(令和2年)』

内閣府『令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査』

法テラス『法定相続人とは何ですか。』

環境省『令和4年度「ごみ屋敷」に関する調査報告書』