家族を崩壊させた父親に嫌悪感…20年、会話らしい会話もなく
――どちらかといえば、憎んでいました
中学生のころ、父の不倫により家庭が崩壊したという40代男性。「あの頃は、不倫相手から母に電話がかかってきたりと、本当に大変だった」と振り返ります。
結局、男性が高校に進学したタイミングで両親は離婚。母と男性と弟は、母方の実家に引越し、父親は20年の住宅ローンが残る家に住み続けていたといいます。
――結局、不倫相手の女性にも捨てられて……ざまーないですよね
以来、ひとり暮らしを続けてきた父親も80歳。本来であれば傘寿を祝うのかもしれませんが、中学生という多感な時期に大騒動を巻き起こした父親への嫌悪感はいまなお拭いきれず……両親が離婚してからは顔を合わせることはほとんどなく、父が住む実家にも20年ほど行っていないといいます。そのため、弟も含め、父親の傘寿を祝うという発想はなかっといいます。
ただ「そのことが今は悔やまれる」と男性。春先、父親が急逝したのです。ポストに郵便物がたまっていると、近所の人から叔父に連絡が入り、そこで行ってみると……すでに亡くなって1ヵ月ほど経った父親がいたといいます。気温が低い日が続いていたため、発見も遅れたのでは、ということでした。
――20年ほど会話らしい会話もなく、顔を合わせることもほとんどありませんでした。ひとりどう亡くなったかと想像すると……傘寿くらい祝ってあげればよかったですね
東京都の資料によると、2020年、23区で自宅で亡くなった人は8,950人。そのうち単身世帯は男性で4,206人、女性が1,890人。6,000人あまりが孤独死しました。
また年齢別にみていくと、65歳以上の高齢者の孤独死は、男性が3,132人、女性が1,594人、合計4,726人。高齢男性の孤独死が多いことが分かります。
内閣府『令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査』によると、高齢者の2~3割の人が、「ひとりだ……」とか「自分は孤立している……」と多少なりとも感じていることが分かります。
・自分には人との付き合いがないと感じることがある…「常にある」9.3%、「時々ある」30.7%
・自分は取り残されていると感じることがある…「常にある」3.4%、「時々ある」19.0%
・自分は他の人から孤立していると感じることがある…「常にある」3.5%、「時々ある」17.7%