そろそろ梅雨明けが発表され、いよいよ夏本番。そんななか、気象庁から10年に1度の酷暑を警戒するよう発表がありました。暑さを乗り切るためにも、無理せずにクーラーを使用することが、身体のことを考えても重要です。しかし収入が限られる高齢者は、そうはいきません。電気代を気にしてクーラーをつけられず、家にもいられない高齢者たちはの行く先は……。
年金6万円では無理…「10年に1度の酷暑」自宅は蒸し風呂と化し地獄、行き場を失う「日本の高齢者」の現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

「物価高」「電気代高騰」でも「年金減」…酷暑でもクーラー代を気にする高齢者は

ただ熱中症予防でクーラーの使用を呼びかけられても、気になるのは電気代。昨今の資源高による電気代高騰の影響で、電気代は上昇傾向。家計に占める割合も年々存在感を増しています。

 

【電気代と家計に占める電気代の割合】

2009年:4,769円(2.9%)

2013年:5,482円(3.4%)

2019年:5,700円(3.5%)

2020年:5,791円(3.8%)

2021年:5,482円(3.5%)

2022年:6,808円(4.2%)

2023年:6,726円(4.0%)

出所:総務省『家計調査 家計支出編』より

 

そんななか苦しい思いをしているのが年金を頼りに暮らす高齢者。年金の支給額は、今年4月(6月支払い分)から昨年比2.7%増。老齢基礎年金は満額で「66,250円」→「68,000円」となりました。しかし物価高はそれ以上の伸びを示し、実質0.6ポイントの目減りとなっています。そんななか、起きている間はもちろん、寝ている間もクーラーをつけろというのは……酷です。

 

クーラーをつけずにはとても家にはいられない。でも電気代がこれ以上増えるのは……そんなジレンマを抱えて、どうやってこの酷暑を生きていけというのか。電気代をケチるしかない高齢者が行き着く先のひとつが、大型スーパーの一角にありました。

 

――クーラーつけっぱなしなんて、年金6万円では無理よ

――ねぇ、24時間つけてたら、逆にお金がなくて死んじゃうわ

 

都内大型スーパーの地下食品売り場。その一角に設けられた休憩スペースにたむろう、数人の老女。最近は10時の開店と同時に入店し、まずはお茶など、ちょっとしたものを買い、仲間たちと談笑スタート。ランチタイムは持参のお弁当。たまにスーパーで買うこともあるとか。そして夕方まで談笑するとようやく解散となります。そんな高齢者の集まりが3~4つ、みることができ、その一角だけは高齢者サロンといった趣。

 

――家は蒸し風呂みたい。地獄よ、地獄

――ここは最高。クーラーもきいているし

 

家にいると電気代がかさむので、涼を求めて出かけるのが習慣。日中は外に出て電気を使わずに過ごし、夜はこの暑さ、クーラーをきちんとつけて寝るといいます。また、友人とたむろできるスーパーがほかにも近所に2軒ほど。あとは区役所や図書館などの公共施設を巡るのだとか。「毎日、同じところに長時間いると注意されちゃうから」というのが理由。

 

前出のように、自営業や専業主婦だった人がもらえるのは老齢基礎年金だけで、満額でも月6.8万円。プラスαでもらえる老齢厚生受給者の平均年金額は14.5万円。ただしあくまでもこれは平均で、老齢基礎年金の満額程度しかもらえていない厚生年金保険(第1号)の受給権者は全体の5.6%。数にすると90万人近くになります。

 

厚生労働省『令和5年国民生活基礎調査』によると、26.4%の高齢者世帯が「生活が大変苦しい」と回答。この夏、涼を求めて街をさまよう高齢者が増えそうです。

 

[参照]

気象庁『早期天候情報』

総務省消防庁『熱中症情報』

総務省『家計調査 家計収支編』

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』

厚生労働省『令和5年国民生活基礎調査』