自然豊かな日本では、毎年のようにさまざまな自然災害が発生します。梅雨時や台風のときに注意したいのは土砂災害。山間部で起きる災害で都会では無縁と思いがちですが、実は東京都心でもその危険性をはらんだ地域が……身近にある災害リスクについてみていきます。
《ランキング》東京23区「土砂災害リスク」…ワースト1は「港区」、「警戒区域」は23区で1,000ヵ所超え (※写真はイメージです/PIXTA)

山間部だけではない…都市部でも発生する土砂災害

雨の多い日本で、毎年のように発生している土砂災害。昨今は、線状降水帯による局地的な集中豪雨が頻発し、多大な被害をもたらしています。

 

国土交通省の発表によると、昨年は43の道府県で1,471件の土砂災害が発生。昭和57年の統計開始以来の平均発生件数である1,099件はもとより、直近10年間の平均1,466件を上回りました。

 

土砂災害といえば、急斜面が崩れ落ちる「崖崩れ」、緩やかな斜面に大量の水がしみこみ、えぐられるように滑る「地すべり」、山の斜面が崩壊し、大量の土砂が川などに沿って一気に下る「土石流」の3つを想像するでしょう。

 

そのため、土砂災害といえば山間部とその周辺に発生するというイメージをもち、都市部とは無縁と思っている人が多いのではないでしょうか。しかし、近年、その危険性が叫ばれているのが「都市型土砂災害」です。

 

記憶に新しいのが、2020年、神奈川県逗子市で発生した土砂災害。マンション下の斜面が崩れ、当時18歳の女子高校生が亡くなりました。

 

災害は、よく晴れた冬の朝。最低気温1度という寒さのなか発生しました。道路脇の高さ約16メートルの斜面が突然崩落し、たまたま通りがかった女子高生が犠牲になったのです。無降雨時の土砂災害は極めて異例で、主因は「乾湿、低温による風化」とされました。また現場は安全対策が手薄になりがちな私有地だったことも、悔やまれることのひとつです。

 

都市型土砂災害は、大きく2つに分かれます。ひとつが都市外縁型の土砂災害。2014年、広島県で発生した大規模な土砂災害はこれにあたります。河川が山から平地へと流れ出るところに広がる扇状地。川の勾配が急に小さくなるため、上流から運ばれてきた土砂が堆積しやすい地形です。そのため土石流が発生すると、扇状地で一気に土砂が広がり、大規模な災害となるわけです。

 

もうひとつの都市型土砂災害が都市内部型。造成の際に盛り土がされますが、大量の雨が染み込んでいくと水圧が高まり、土を支える擁壁を破壊させるというものです。都市部には無数の盛り土がありますが、すべての盛り土が危険というわけではなく、排水がきちんとされていない盛り土は、そもそも大雨による崩壊の危険が高いといえます。さらに昨今、局地的な集中豪雨が頻発し、排水能力の限界を超えることも。そうなると、排水がしっかりとされている盛り土であっても、崩壊がないとはいいきれないのです。