ビジネスパーソンとして業務経験を積むなかで、避けて通れないのが、新人社員や後輩社員への指導。なかなか言いたいことがうまく伝わらず、不安になったことがある人も多いのではないでしょうか? 新人社員に業務を教えたり、指示したりする際、正確に伝えるために意識しておきたいポイントについて、JMAM「基本能力研究会」の著書『新人指導の教科書』(日本能率協会マネジメントセンター)より、詳しくみていきましょう。
先輩社員「報告は大切だよ。必ずやってね」→新人社員「??」…経験の浅い新人社員にも高確率で響く〈上手い伝え方〉

論理的に構成する

ビジネスパーソンが仕事を進めるうえで求められる必須の能力として、「論理的思考力」が挙げられます。話すときも、内容を論理的に組み立てて、重要なポイントを絞り込み、伝えたいことを強調することが大切です。

 

そのためには、話し手自身が話の内容を論理的に整理できていなければなりません。そのために、つぎの点に留意しましょう。

 

留意点① 話す前に構成する

話をするときは、話す時間の長さにかかわらず、必ず内容の組立てを行います。事前に準備をし、おおよその時間配分を考えます。手短かに話を組み立てるには、序論・本論・結論を決めておきましょう。

 

序論では、雰囲気づくりとテーマへの導入を行います。

 

つぎに、具体例を示します。

 

「今日のミーティングの主旨は、新商品の紹介についてです。今週から、来月お客さまにご紹介する新商品のパンフレットの配布が始まります。Aさんにも、新たにやってもらいたい仕事があります」

 

本論では、テーマとなる主題・主張や理由・目的について話します。

 

「やってもらいたい仕事というのは、営業先リストの整理です(主題)。営業先リストの整理がなぜ必要かわかるかな? そう、営業先をいちいち調べて電話をかけていたのでは効率が悪いし、同じ相手に重複して電話したのでは、迷惑をかけることになるからです(理由)。営業が電話をかける準備のために、リストにまとめてもらいたい(目的)。ここまでは大丈夫?」

 

このように話の内容を整理して、筋道を立てて話を進めれば、相手も理解しやすくなるわけです。データをリストの元データにするか、リストに整理する項目(会社名、担当者名、電話番号、後で相手の反応を記入する欄など)を何にするのか、といった具合に、具体的な仕事に落とし込んでいきます。

 

結論では、本論から導く要旨を話して結論としてまとめます。

 

「やるべき内容について、わからないことはないかな? では、具体的な作業の段取りについて考えてみてください。わからないことがあったら、いつでも声をかけて質問するように」

 

留意点② ポイントを絞る

大事なことだからと、くどくど話しても、伝達する事柄が増えるほど、聞き手にとって情報の価値は下がります。あれもこれもとポイントを盛り込むと、新人は消化不良を起こして理解できない原因となりかねません。

 

最低限、「これだけは覚えておいて」と思うポイントをあらかじめ絞り込んでおきましょう。そして、そのポイントが、論理的につながるように構成してください。新人指導では、あくまでも重点主義に徹しましょう。

 

ポイントの数は、3つまでに絞るのが基本です。また、話をする際は、「ポイントは3つです」と示してから、「1つめのポイントは……」「2つめのポイントは……」と、1つずつポイントを示していくとわかりやすいでしょう。

 

留意点③ 適切な事例紹介を心がける

どんなに大切なことでも、経験したことのない新人には、具体的にどういうことなのか理解できないことが少なくありません。

 

たとえば、「報告は大切なので、必ず行うように」と言われても、新人にはどう大切なのかがわからないものです。こんなとき、事例を挙げて、具体的な話にすれば、新人も理解しやすくなります。

 

たとえば、報告に関する例として、「私が新人のとき、お客さまとの商談がうまくまとまり、そのまま一緒に飲みに行ったんだ。移動の途中で、電話を入れればよかったんだが、お客さまと話をするほうが大切だから後でいいだろうと、ついそのままにしてしまった。ところが、課長は遅くまで私の報告を待っていたらしい。『お前一人で仕事をしているんじゃないんだ』と、報告を入れなかったことをひどく叱られた」といった失敗談・成功談を交えて話をすると、新人の理解も深まるというものです。

 

 

JMAM「基本能力研究会」