定年後、夫婦で毎月約30万円の年金を受け取り充実した老後を送っていた安達夫婦(仮名)。しかし夫の死後、孤独感と予想外に少ない「遺族年金額」に驚いた妻は、SNSにのめり込むようになります……。衝撃の理由で「老後破産危機」に陥った妻に、FPはどのような助言を行ったのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏が、事例をもとに解説します。
母さん、やめてくれ!…年金「月30万円」で平穏な老後となるはずが、夫の急死で受け取る〈遺族年金額〉に衝撃。憔悴の66歳女性がとった“起死回生の策”に、40歳息子の悲痛な叫び【FPの助言】
FPが試算して明らかになった、美帆さんの「老後破産危機」
息子と美帆さんから一連の話を聞いたFPはまず、美帆さんの毎月の生活費を洗い出し、現状を把握することにしました。
すると、現在の美帆さんの生活費は、月20万円かかっていることがわかりました。内訳は以下のとおりです。
<生活費内訳>
・住居費:3万円
・食費:7万円
・水道光熱費:2万円
・通信費:1万5,000円
・交際費:3万円
・その他:3万5,000円
■合計……20万円
年金収入は15万4,000円ですから、毎月4万6,000円の赤字となっています。
FPは、「この状態が続けば、あと15年で美帆さんは破産してしまいますよ」と話しました。とはいえ、美帆さんの年齢や体力面を考慮すると、これから労働収入を得ることは難しそうです。
そこでFPは、美帆さんが支出を減らせるよう、「生活費のスリム化」を提案しました。通信費や食費など、1つずつ支出を減らせるか見直していきます。
すると、月の生活費を2万円削減する見通しがつきました。このペースであれば、資金の枯渇は、15年後から26年後に延ばすことができます。
「家に閉じこもるより、外へ出て人と接したい」とアルバイトを開始
こうして、息子とFPの力を借りながら、改めて生活を立て直すことにした美帆さん。
夫を失ったうえに、さらに投資詐欺に遭って、どん底状態の美帆さんは、孤独と不安で夜も眠れない日々を過ごしていましたが、時間の経過とともに、少しずつ心の安定を取り戻し、前向きな気持ちが芽生えてきました。
やがて、「ずっと家に閉じこもるよりも、外に出て人と接したい」と考えた美帆さんは、ファーストフード店でシニア人材として働くことにしました。
初めのうちは緊張と不安がありましたが、若い世代から同年代まで、さまざまなバックグラウンドを持つスタッフとともに働くことで、美帆さんはしだいに生き生きと元気を取り戻していきました。月に2万円の労働収入を得ることで、生活にもよりゆとりが持てるようになりました。
仕事を通じて自信と生きがいを感じるようになり、美帆さんには笑顔が戻りました。美帆さんはいまも、孤独に苛まれることなく、前向きで充実した日々を過ごしているそうです。
辻本 剛士
ファイナンシャルプランナー