定年後、夫婦で毎月約30万円の年金を受け取り充実した老後を送っていた安達夫婦(仮名)。しかし夫の死後、孤独感と予想外に少ない「遺族年金額」に驚いた妻は、SNSにのめり込むようになります……。衝撃の理由で「老後破産危機」に陥った妻に、FPはどのような助言を行ったのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏が、事例をもとに解説します。

母さん、やめてくれ!…年金「月30万円」で平穏な老後となるはずが、夫の急死で受け取る〈遺族年金額〉に衝撃。憔悴の66歳女性がとった“起死回生の策”に、40歳息子の悲痛な叫び【FPの助言】
弱り切った妻に持ちかけられた「投資話」
収入が減ったとはいえ、生活スタイルをすぐに変えることはできません。夫の死後、美帆さんの月々の生活費は年金支給額を大きく上回り、ここに自宅の修繕費や固定資産税などの出費も重なります。資産はますます目減りしていきました。
このままではまずいと焦る美帆さんですが、悲しみから完全に立ち直ったわけではなく、今年40歳になる息子も、家族と遠方に住んでおり、あまり頻繁に相談することもできません。
「悲しいときや悩みがあるときに、文字を打てば誰かに見てもらえるアプリがあるんだよ」と息子にSNSを教わった美帆さんは、孤独から逃げるようにSNSにのめり込むようになりました。
文章を打ち込むと、見知らぬ誰かから反応があります。そのうち、いつもリアクションをくれる男性Aさんに、お金のことについても相談するようになりました。「実は夫が亡くなってから、生活が大変になってしまったの」。
すると、仮想通貨で莫大な利益を上げているというAさんは、「美帆さんの資金も、僕が代わりに運用してあげますよ」と言うのです。
「そんなうまい話、あるのかしら……」。美帆さんは半信半疑のまま、最初は少額を運用してもらうことにし、Aさんが指定する口座に10万円振り込みました。
翌月、美帆さんの口座に2万円の配当金が入金されました。「こんなに早く利益が出るなんて……!」と驚く美帆さん。しかも、配当金の振込は、3ヵ月間続きました。美帆さんはすっかりAさんを信用し、投資額を徐々に増やしていきました。
しかし、総額500万円近くを振り込んだあたりで、突然Aさんと連絡が取れなくなってしまいました。
不安に感じた美帆さんは、息子に電話をかけ、事の次第を話しました。すると、息子はひどく取り乱した様子で美帆さんにこう声をかけます。
「おい、母さんまじかよ……それ詐欺だよ、いますぐやめてくれ!」。