弱り切った妻に持ちかけられた「投資話」

収入が減ったとはいえ、生活スタイルをすぐに変えることはできません。夫の死後、美帆さんの月々の生活費は年金支給額を大きく上回り、ここに自宅の修繕費や固定資産税などの出費も重なります。資産はますます目減りしていきました。

このままではまずいと焦る美帆さんですが、悲しみから完全に立ち直ったわけではなく、今年40歳になる息子も、家族と遠方に住んでおり、あまり頻繁に相談することもできません。

「悲しいときや悩みがあるときに、文字を打てば誰かに見てもらえるアプリがあるんだよ」と息子にSNSを教わった美帆さんは、孤独から逃げるようにSNSにのめり込むようになりました。

文章を打ち込むと、見知らぬ誰かから反応があります。そのうち、いつもリアクションをくれる男性Aさんに、お金のことについても相談するようになりました。「実は夫が亡くなってから、生活が大変になってしまったの」。

すると、仮想通貨で莫大な利益を上げているというAさんは、「美帆さんの資金も、僕が代わりに運用してあげますよ」と言うのです。

「そんなうまい話、あるのかしら……」。美帆さんは半信半疑のまま、最初は少額を運用してもらうことにし、Aさんが指定する口座に10万円振り込みました。

翌月、美帆さんの口座に2万円の配当金が入金されました。「こんなに早く利益が出るなんて……!」と驚く美帆さん。しかも、配当金の振込は、3ヵ月間続きました。美帆さんはすっかりAさんを信用し、投資額を徐々に増やしていきました。

しかし、総額500万円近くを振り込んだあたりで、突然Aさんと連絡が取れなくなってしまいました。

不安に感じた美帆さんは、息子に電話をかけ、事の次第を話しました。すると、息子はひどく取り乱した様子で美帆さんにこう声をかけます。

「おい、母さんまじかよ……それ詐欺だよ、いますぐやめてくれ!」