定年後、夫婦で毎月約30万円の年金を受け取り充実した老後を送っていた安達夫婦(仮名)。しかし夫の死後、孤独感と予想外に少ない「遺族年金額」に驚いた妻は、SNSにのめり込むようになります……。衝撃の理由で「老後破産危機」に陥った妻に、FPはどのような助言を行ったのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏が、事例をもとに解説します。
母さん、やめてくれ!…年金「月30万円」で平穏な老後となるはずが、夫の急死で受け取る〈遺族年金額〉に衝撃。憔悴の66歳女性がとった“起死回生の策”に、40歳息子の悲痛な叫び【FPの助言】
遺族年金、たったこれだけ?…年金事務所で衝撃を受けた美帆さん
その後、息子や友人の助けもあり、なんとか葬儀や相続の手続きを済ませた美帆さん。少しずつ新たな人生を歩む準備を進めます。
これから1人で生活するにあたって、美帆さんはまず、自身の年金収入を把握するために、年金事務所を訪れました。
夫が生きていたころ、生命保険の見直しをした際に「夫が亡くなったらまとまった遺族年金を受け取れる」と聞いていた美帆さんは、金銭面について特に心配していませんでした。
最低でも夫の年金の半分程度は遺族年金として受け取れるだろう、自身の年金と合わせて、大体290万円(月約24万円)くらいになるだろうと考えていたのです。
しかし、年金事務所で職員に年金額を詳しく計算してもらったところ、美帆さんがこれから受け取る年金額は、遺族年金と合わせて185万円(月約15万円)であることが判明しました。想定より100万円も少ない金額に、美帆さんは途方に暮れてしまいました。
妻の受け取れる年金が少ないワケ
なぜ、美帆さんの受け取る年金は、予想より少なくなってしまったのでしょうか。
夫が死亡した場合、65歳以降の妻への遺族厚生年金は「夫の老齢厚生年金の3/4」(ア)あるいは「夫の厚生年金の1/2と妻自身の老齢厚生年金の1/2の合計」(イ)、いずれか高いほうの金額で計算されます。
今回のケースですと、美帆さんの老齢厚生年金は99万円のため、以下のように計算されます。
(ア)109万円×4分の3=81万7,500円
(イ)54万5,000円(109万円÷2)+49万5,000円(99万円÷2)=104万円
(ア)と(イ)を比べると(イ)のほうが高いため、したがって、美帆さんの遺族厚生年金は104万円となります。
しかし、この遺族厚生年金104万円から、美帆さんが受け取っている厚生年金額を差し引くルールがあります。美帆さんは遺族厚生年金104万円を受け取れるものの、自身の老齢厚生年金部分の99万円は支給停止となるのです。
結果として、美帆さんが実際に受け取れる年金額は、美帆さんの老齢基礎年金81万円+老齢厚生年金99万円+遺族厚生年金(104万円-99万円)=合計185万円となります。
いままで毎月約30万円の年金暮らしが、約15万4,000円に。美帆さんは困り果ててしまいました。