厚生労働省の「生活保護の被保護者調査(令和6年3月分概数)」によると、全国の生活保護受給世帯のうち、約55.5%が65歳以上の高齢者世帯となっています。今後さらに高齢化が進むなか、生活保護を受けるシニアの増加が予想されますが、生活保護を受けながら「老人ホーム」に入居することは可能なのでしょうか。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが、66歳Aさんの事例をもとに解説します。
老人ホームに入りたい…月7.5万円の〈生活保護費〉を受け取る66歳「要介護2」男性の悲痛な嘆き【CFPの助言】
高齢の生活保護受給者が増えている
厚生労働省の「生活保護の被保護者調査(令和6年3月分概数)」によると、生活保護の被保護世帯数は164万2,228世帯(保護停止中を含まない)で、そのうち55.5%の91万0,903世帯が65歳以上の高齢者世帯となっています。この高齢者世帯のうち、単身世帯は84万5,791世帯と92.8%を占めており、高齢の単身者が生活保護を受けているケースが多いことがわかります。
[図表]を見ると、生活保護受給者の総数が増えるにしたがって、高齢者の被保護世帯も増えています。
したがって、今後さらに高齢化が進む日本では、高齢化の進行とともに生活保護受給者の数も増えていくことが予想されます。
「生活保護制度」のキホン
「生活保護制度」とは、預貯金などの資産や年金・給与などの収入が、資産の売却・活用、労働などの能力の活用、親族からの援助などあらゆる手段を活用してもなお、国が定める生活水準に満たない方に、国が困窮の程度に応じた保護を行い、憲法で定められた「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、自立をサポートする制度です。
申請窓口は、自治体の福祉課や社会福祉事務所となっています。
世帯全員の収入(年金、給与など)と、国が定める基準で計算された「最低生活費」を比較し、収入が最低生活費に満たない場合に生活保護費が支給されます。
なお、生活保護は下記の8つの扶助に分かれており、このうち対象者が必要なものが支給されます。
・生活扶助
・教育扶助
・住宅扶助
・医療扶助
・介護扶助
・出産扶助
・生業扶助
・葬祭扶助
高齢者の場合は、たとえば、「生活扶助」(食費・被服費・光熱費など)や「住宅扶助」(家賃)が毎月被保護者に支給されるものに該当します。
また、病院で診察を受けたり入院した際の「医療扶助」は医療機関に、介護が必要になった場合の「介護扶助」は介護施設に直接支払われるため、本人が負担する必要はありません。