定年後の第二の人生には長年勤務した会社に勤め続けるだけでなく、転職や起業といった選択肢もあります。しかし、よかれと思ったチャレンジが失敗に終わるケースは珍しくありません。場合によっては経済的に苦境に陥るおそれもあるでしょう。ある事情で定年後に自営業を選択した池田さんの事例から、セカンドライフで起業を選択する場合の注意点とリカバリーについて、CFPの松田聡子氏が解説します。

(※写真はイメージです/PIXTA)
見返してやりたかった…退職金と貯金で老後資産3,000万円の元専務、60歳で実質的な“左遷”の屈辱。「人生最後・逆襲の挑戦」に打って出るも、老後危機に転落の顛末【CFPの助言】
実質的な左遷に「見返してやる」…元専務の人生最後のチャレンジ
池田直樹さん(仮名・62歳)は27歳で従業員10人程度だった食品卸売会社に入社しました。以来、社長の右腕として専務に昇進し、小さな会社を業界でも認められる中堅企業
そんな池田さんに、転機が訪れたのは60歳のときでした。創業社長が引退し、二代目となった社長の長男は、池田さんを関連会社に出向させます。
「役員の肩書きはありましたが、体のいい左遷です。そのタイミングで古参社員の多くは退職しました」
このまま会社に残るべきか悶々と過ごすうちに、池田さんは取引先の長谷川社長(仮名)から思いがけない話を聞きます。
「池田さんは私がサイドビジネスでジェラート店を経営しているのを知っているよね。実は店を任せきりだった妻がそろそろやめたいと言っているんだ。誰か引き継ぐ人はいないかな」
自分の悩みを見透かしたかのような長谷川社長の話に、池田さんは強く心惹かれました。
「ジェラート店を繁盛させて、二代目社長を見返そう」