近年、賃貸で入居するには、賃料保証会社を利用することが実務では定着してきています。賃料保証会社とは、賃借人に賃料の不払いがあった場合に、賃料を立て替えてくれる会社ですので、賃料保証会社をいれておけば、ひとまず、賃貸人としては賃料不払いを回避することができます。もっとも、賃料保証契約も永久的に保証してくれるわけではなく、賃料保証契約も、賃貸契約と同様に更新時期がきてしまいます。そのため、いったん賃料を立て替えてくれているからいいものの、賃料不払いを続ける賃借人にはでていってもらわないと賃貸人としては、将来的に困ってしまいます。さて、このような背景から、賃料保証会社の立て替えがあるものの、賃料不払いを続けるならば、賃貸人から出て行って欲しいと主張した場合、法的に認められるのでしょうか? 弁護士が詳しく解説します。

賃料立て替えの場合の裁判例

この問題については、今のところ最高裁の判決までは見当たりませんが、複数の裁判例が出されており、代表的な大阪高等裁判所判決平成25年11月22日(判例時報2234号40頁)の判旨をご紹介したいと思います。

 

(判旨引用)

本件保証委託契約のような賃貸借保証委託契約は,保証会社が賃借人の賃貸人に対する賃料支払債務を保証し,賃借人が賃料の支払を怠った場合に,保証会社が保証限度額内で賃貸人にこれを支払うこととするものであり,これにより,賃貸人にとっては安定確実な貨料収受を可能とし,賃借人にとっても容易に賃借が可能になるという利益をもたらすものであると考えられる。しかし,賃貸借保証委託契約に基づく保証会社の支払は代位弁済であって,賃借人による賃料の支払ではないから,賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するに当たり,保証会社による代位弁済の事実を考慮することは相当でない。なぜなら,保証会社の保証はあくまでも保証委託契約に基づく保証の履行であって,これにより,賃借人の賃料の不払という事実に消長を来すものではなく,ひいてはこれによる賃貸借契約の解除原因事実の発生という事態を妨げるものではないことは明らかである。

 

判旨をそのまま引用しているので、少し読みづらいかもしれませんが、要は、あくまで賃料保証会社が立て替えて払っているだけであって、賃料保証会社が支払っているからといって、賃借人側の債務不履行の事実、約束違反が消えるわけではないよ、という内容です。

 

ここからは筆者の私見ではありますが、このように判断しておかないと、賃料保証会社との契約も無期限に継続するわけではなく、将来的に賃料不払いが生じ、賃貸人側に損害が発生する可能性は非常に高いと思います。また、賃借人の保護が重要だといっても、賃料保証会社の立て替えを期待して、賃料支払いという一番重要な義務を履行しない賃借人を保護する必要があるのか? といえば、そこまで守られる必要はないと言えそうです。

 

近年、賃料保証会社の利用が一般化し、「これさえあれば大丈夫」と考えられる賃貸人の方も増えておりますが、今回お話ししたように、一時的な賃料の立て替えが受けられたとしても、最終的に立退訴訟を賃貸人が行わねばならない場面があることは肝に銘じておく必要があるでしょう。