今の年金水準をキープというシナリオもあるが…
そして2024年度20歳の若者が、年金をもらうようになったことを考えてみましょう。
失われた30年といわれる昨今の日本。この経済の状況のままというシナリオ(過去30年投影ケース)では、受給開始時期65歳、就労期間20~59歳の40年、平均受給期間25年9月とした場合、所得代替率は50.4%。所得代替率とは、年金を受け取り始める65歳における年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合かというもの。2024年時点61.2%。つまり、いま20歳の若者たちが65歳で年金を受け取るのであれば、年金水準は2割ほど減少するというシナリオです。
経済の状態は同じ「過去30年投影ケース」でも、受給開始時期が66歳10ヵ月、就労期間が46年10ヵ月と6年強延長となり、平均受給期間が23年11ヵ月と、上記シナリオよりも2年弱短ければ、所得代替率は現状の61.2%水準を維持できるとしています。
また厚生年金の適用拡大など、いま議論として挙がっている制度改正をすべて行った場合は、所得代替率は現状をも上回る可能性も。
40年以上先が現状とライフスタイルであったり、制度下であったりということは考えにくく、意外と現実的なシナリオなのでは……そんな楽観的見方を、ついついしてしまうものです。
では今回の財政検証において、最悪のシナリオをみていきましょう。それは「1人アタリ成長ケース」。
実質賃金上昇率はわずか0.1%、実質的な運用利回りは1.3%、さらに実質経済成長率はマイナス0.7%という、目も当てられない状況。この場合、機械的に給付水準調整を続けると、2059年度に国民年金の積立金はゼロに。完全に年金支給のために必要な財源を、その時々の保険料収入から用意する賦課方式に移行。所得代替率は33~37%程度となり、実質的に現行の公的年金制度は崩壊するとしています。
――そんな最悪のことが本当に起こりうるのか
新型コロナで落ち込んだ経済は、どこの国も早く好転したのに対し、日本はとりわけ回復の鈍さが露呈。この先の経済の見通しも芳しくないと予想する専門家も多く、「100年安心」といわれている日本の年金制度も、いま現在20歳くらいの若者が高齢者になるころにはまったくカタチを変えていたり、年金という概念すらなくなっていたり……そんな可能性もゼロとは言い切れない状況にあります。
年金不安を口にしながらも、なんだかんだ、年金にお世話になる老後をイメージしている日本人。最悪、年金ゼロも想定して自助努力を続けていったほうが身のためかもしれません。
[参照]