5年に1度行われる“公的年金の健康診断”である「財政検証」。その最新の結果が公表となりました。そこで明らかになったのは、明るいとはいえない日本の未来。みていきましょう。
月収30万円、32歳サラリーマン…最新の政府試算で判明した、65歳でもらえる「衝撃の年金額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

そもそも「財政検証」とは?

厚生労働省は、7月3日に開かれた社会保障審議会の年金部会で「財政検証」の結果を示しました。

 

そもそも「財政検証」は、少なくとも5年ごとに人口や経済の実績を織り込み、公的年金の財政バランスの見通しを示すもの。“公的年金の健康診断”といわれています。

 

「財政検証」では、年金の加入期間や賃金に一定の仮定を置いた「モデル年金」を設定し、将来の年金の給付水準がどのように変わるかを検証。そのモデル年金は、夫が厚生年金に加入して平均的な男子賃金で40年間就業し、その配偶者が40年間にわたり専業主婦の夫婦である場合の2人分の基礎年金と夫の厚生年金の合計額です。

 

また年金の給付水準は「所得代替率」で示されます。これは、年金を受け取り始める65歳における年金額が、現役世代の手取り収入(ボーナス込み)と比較して、どれくらいの割合かを示すものです。

 

「財政検証」では「所得代替率」のほか、物価上昇率を用いて現在の価値に割り戻した年金額も示します。「所得代替率」は現役世代の賃金に対する相対的水準、「物価上昇率を用いて現在の価値に割り戻した年金額」は、購買力の絶対的水準、というわけです。

 

現行の年金制度は給付水準を物価や賃金の上昇率よりも低く抑える「マクロ経済スライド」を導入。所得代替率が50%を下回らないようにすることが法律で決められています。

 

日本経済が順調に成長する場合の年金額、日本経済が現状のままの場合の年金額

2024年の「財政検証」では、実質経済成長率がプラス1.6%~0.7%までの4つのケースを想定し試算が行われました。

 

「モデル年金」は月額22万6,000円。現役世代の男性の平均手取りは37万円と想定。2024年時点の所得代替率は61.2%。2019年の「財政検証」よりも0.5ポイント下がりました。

 

現状よりも高い経済成長を見据えた「成長型経済移行・継続ケース」では、物価上昇率は2.0%、実質賃金上昇率を1.5%と想定。所得代替率は2029年度に60.3%、モデル年金は24.0万円。2037年度に所得代替率は57.6%、モデル年金は25.1万円。以降も所得代替率は57.1%をキープし、2060年度のモデル年金は33.8万円。年金の水準は、現状と比較して6%程度の減少に踏みとどまる見通しです。

 

一方、経済成長率が現状に近い状態が続くとする「過去30年投影ケース」では物価上昇率を0.8%、実質賃金上昇率を0.5%と想定。所得代替率は2029年度に60.1%、モデル年金は22.3万円。そして2040年度には所得代替率は56.3%、モデル年金は21.6万円。そして33年後の2057年には、所得代替率は50.4%、モデル年金は21.1万円。以降はマクロ経済スライドが終了し、所得代替率は50.4%をキープするとしています。つまり、33年後の年金水準は、現状の2割減になるということになります。

 

さらにマイナス成長という最悪のケースでは、2059年に国民年金の積立金が枯渇するとしています。つまり事実上、年金制度は破綻を迎えてしまうわけです。