「マッチングアプリで婚活でもしようか」
FPからの指摘は厳しいものでした。Mさんが考えているとおり、このままでは預貯金は1年程度しか持ちません。心療内科に通うほど集中力に難がある現状では、Mさんが本来持つポテンシャルを発揮できず、漫然と毎日を過ごすだけでしょう。
体調面からも自営業として頑張れる状態ではありません。就職し固定給を得るしかありませんが、年齢的に厳しいのが現状です。年収は最低でも700万円ないと生活を維持できません。老後資金もこれから増やしていかなければ、独身の老後は悲惨なものになります。FPが考える解決策としては次のようなものでした。
・都心の物件であるため、アンダーローンとなるかもしれない
・就職をし、年収が下がった分は兼業をして補っていく
・失敗が許されないので投資のリスクは背負えない
・75歳まで働くこと
それを聞いてMさんはため息をつきます「マッチングアプリで婚活でもしようか……」。
申し訳ないですが、冗談にさえ聞こえません。おひとりさまの人生設計はリスクと隣り合わせであることを痛感します。
攻めるばかりではない…守りの姿勢も一層重要に
おひとりさまのライフプランには、ダブルインカム世帯よりもはるかに慎重な生き方が必要になります。
Mさんのように優秀な女性であっても、あまりにも我を主張しすぎ、安定した会社員の立場を捨ててしまうなどあってはならないことです。特に住宅ローンのように大きな債務を背負ってしまうと、会社から解雇されない限り、どのような状況でも会社にしがみつく覚悟が必要になるでしょう。
もちろん会社のなかで閑職に追い込まれることがないよう、コンプライアンスを守り、人間関係を大切しなければなりません。いつまでも自分が主役のままでなにかと戦い、勝つことばかり考えていてはいずれ自分の立場を失います。
資産運用についても、おひとりさまの場合、許容できるリスクは極めて限定的です。老後資金が半減するなどの事故が起きてしまうと、文字通り命取りになってしまいます。資産運用のポートフォリオは極めて安全性を重視したものにする必要があります。目先の欲に惑わされ、リスク性の高い金融商品を購入することは避けるべきです。
住宅を早い段階で手に入れるべきなのは先述したとおりですが、住宅ローンは健康でなければ借りられず、仕事をし続ける健康がなければ返済していけないものです。もし働けなくなったら返済ができず家計破綻するのは確実です。このリスクについては保険や貯蓄などを活用した対策を立案しておく必要があります。
おひとりさまと聞くと少々気楽なイメージもありますが、実際のところは石橋を叩いて渡るような慎重さと人生設計が求められます。我を主張しすぎるような生き方は、ファイナンシャルの面では危険でしかありません。
長岡 理知
長岡FP事務所
代表